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第3章 世界経済の見通しとリスク

第1節 アメリカ経済の見通しとリスク

2.経済見通しに係るリスク要因

  見通しに係る下振れリスクは半年前に比べて弱まっているものの、依然としてリスクのバランスは下方に偏っている。

(1)下振れリスク

(i)一次産品価格の更なる高騰
 新興国需要の増加等を背景に原油等の一次産品価格が高騰している。ガソリン価格や食品価格が更に上昇し、高止まりの状態が長期化する場合には、企業収益を圧迫するとともに、実質可処分所得の減少を通じて消費を抑制するおそれがある。

(ii)失業率の高止まりの継続
  雇用のミスマッチが解消されず、失業率が高止まる場合には、所得の回復の遅れから、消費・住宅等の家計部門に及ぼす影響が懸念される。

(iii)住宅価格の更なる下落
  住宅価格が更に下落する場合には、住宅需要の回復の遅れや逆資産効果を通じた消費の抑制が生じる可能性がある。また、差押え物件の資産価値の低下を通じた金融機関のバランスシートの悪化など、金融システムに及ぼす影響が懸念される。

(iv)州・地方財政の悪化による地域経済の低迷
  地域経済の回復が遅れ、税収の低迷から州・地方財政が更に悪化する場合には、増税措置や歳出削減等を通じて地域経済を更に下押しする可能性がある。

(v)中堅・中小金融機関の経営悪化
  商業用不動産市場の低迷が長期化する場合には、同不動産向け貸出を収益の中核とする中堅・中小金融機関の経営を圧迫し、経営破たんを拡大させるおそれがある。また、中堅・中小金融機関の経営悪化を受けて、中小企業の資金調達が困難な状況になれば、生産や投資の縮小、雇用の悪化などを通じて景気を下押しするおそれがある。

(2)上振れリスク

  メインシナリオにおける想定以上に、景気の回復テンポが加速する場合の要因としては以下が考えられる。

(i)資産価格の上昇
  内外の需要の回復により企業業績が改善し、株価が更なる上昇に向かう場合には、資産効果を通じて個人消費が拡大する可能性がある。

(ii)輸出の増大
  世界経済の回復に伴い想定以上に各国の需要が高まる場合には、輸出の増大を通じて景気の回復テンポが加速する可能性がある。また、ドル安が更に進行し、又は、国家輸出戦略が想定以上の成果を挙げる場合には、輸出が更に拡大する可能性もある。

(iii)信用収縮の大幅な緩和
  景気の回復に伴って、金融機関の経営状況の改善や家計・企業に対する信用リスクの低下が大きく進展した場合には、金融機関の信用創造が喚起され貸出が増加し、消費や投資が拡大する可能性がある。


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