目次][][年次リスト

まえがき

  「世界経済の潮流」は、内閣府が年2回公表する世界経済に関する報告書です。今回の報告書は、我が国が、東日本大震災がもたらした打撃を乗り越え、復興に向けて歩み出すとともに、新たな自律的成長を実現すべく、再生に向け再始動しようとするなかで公表されるものです。
  我が国が未曾有の国難にある中でも、世界経済の動きはとどまることなく進んでいます。世界経済は、世界金融危機後に深刻な景気後退を経験しましたが、様々な努力でそれを乗り越え、現在は回復を続けています。しかし、同時に、住宅市場や金融システムの一部に金融危機の後遺症が残っていることに加え、原油価格高騰やソブリン・リスクの再燃など、新たなリスク要因が山積しています。
  東日本大震災による打撃から立ち直り、日本が再生するためには、こうした世界経済の現状や先行きを的確に把握した上で、国家戦略の再設計・再強化を図っていくことが極めて重要です。今回の報告書は、そのためのバックグラウンドとなる分析を提供しようとするものです。
  この「世界経済の潮流2011年I」では、2000年前後からみられる「全球一体化」と新興国のプレゼンスの拡大という歴史的にみても大きな二つの構造変化について分析することとしました。これを受けて、副題を「歴史的転換期にある世界経済:『全球一体化』と新興国のプレゼンス拡大」とするとともに、全体を3章構成としました。
  第1章「歴史的転換期にある世界経済」では、「全球一体化」と新興国のプレゼンスの拡大という二つの構造変化が、「財市場」「資本市場」「労働市場」でどのように進んでいるのか、更に世界金融危機の発生後、こうした傾向が加速しているのかどうかを分析し、今後の経済政策運営への示唆を探っています。
  第2章「再び回復が加速する世界経済」では、世界経済の金融危機からの回復を総括するとともに、新たなリスク要因とそれへの対応、東日本大震災の世界経済への影響について分析しています。その上で、アジア、アメリカ、ヨーロッパの景気の現状と先行きをみる上でのポイントについて整理をしています。
  第3章「世界経済の見通しとリスク」では、第1章と第2章の分析を踏まえ、世界経済の先行きについて、想定されるシナリオを提示するとともに、そのリスクについて検討をしています。
  本報告書が、世界経済の現状や今後の展望についての理解を深め、東日本大震災を経験した我が国の新しいあり方を考える際の一助となれば幸いです。

平成23年5月


内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)
齋藤  潤


目次][][年次リスト