世界の原油取引における我が国の相対的な地位は低下している。すなわち、新興国の経済成長に伴い、日本の世界全体のエネルギー需要に占める割合は、70年の5.6%から4.2%へと小さくなり、中国は4.7%から19.5%へと大きくなっている(第1-1-35図)。このため、近年、我が国の価格に対する影響力は相対的に弱まっているものと考えられる。
今後とも、新興国を中心とする世界経済全体のエネルギー需要の増加とそれに伴う価格の上昇は続くことが見込まれ(25)、資源獲得競争が激化すると考えられる。
我が国においては、東日本大震災により直面することとなった電力制約や原子力発電の安全性への懸念を踏まえ、これまでのエネルギー政策を抜本的に見直し、新たなエネルギー戦略を検討することとした(26)。この新たな戦略の策定においては、これまで分析したように、今後とも世界的な需要拡大によりエネルギー価格上昇が続くであろうことを大前提として、検討を進めるべきである。
また、再生可能エネルギーの導入・普及の推進を含め供給制約打破に向けた努力が重要である。今後の再生可能エネルギーの導入・普及のスピードは、その技術進歩の度合いや、他のエネルギーの発電コストや技術開発コストと比較した競争力がどの程度高まるかによって変化する。技術的に開発途上な分野であることや資本集約的でコストがかかること、国家のエネルギー安全保障とも関連することから、政府による支援も正当化され得る。例えば、アメリカでは、オバマ政権による世界金融危機発生後の景気刺激策の一環として、電力供給量等に対し一定の奨励金を支給する再生可能エネルギー生産インセンティブ(REPI(27))や、プロジェクトに対する低利融資を行うための債券発行、税制優遇(生産税控除、投資税控除等)等が行われている。また、国際基準の策定、商業・商品化に向けた制度整備における国際協力が必要であると考えられる。
さらに、世界貿易に占める一次産品貿易の割合が、近年の一次産品価格の上昇の流れを受けて、年々拡大しており、資源輸入国から資源輸出国への世界的な所得移転が加速している。このような中、資源輸入国である我が国では、交易条件が悪化し交易損失が拡大傾向にある。今後とも一次産品の需要増と価格上昇が見込まれることから、交易損失を拡大させないためには、新興国との間で価格競争を行うのではなく非価格競争力のある製品の輸出を一層推進するなど交易条件を悪化させないような貿易構造のあり方を考えていく必要もあろう。