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第1章 歴史的転換期にある世界経済:「全球一体化」と新興国のプレゼンス拡大

第1節 世界の財市場と一次産品価格

5.エネルギー供給拡大の努力

  新興国のプレゼンスの拡大に伴って増大するエネルギー需要に対応するため、供給制約を打破するための努力が行われている。ここでは、再生可能エネルギーと資源リサイクルについて取り上げる。

(1)再生可能エネルギー

(i)再生可能エネルギーの供給状況
  世界の再生可能エネルギーの供給量は、08年時点で15億6,720万石油換算トン(20)である。世界の一次エネルギー供給量に占める割合は12.8%であり、第1次石油危機が起きた73年と比べ供給量は約2倍になっているものの、シェア自体には大きな変化がみられない(第1-1-30図)。一次エネルギー供給量に占める再生可能エネルギーの割合を先進国・新興国等のそれぞれについてみると、OECD諸国では再生可能エネルギーの占める割合は7%程度である一方、新興国・途上国では17%程度となっている。再生可能エネルギーの中ではバイオ燃料等(21)の占める割合が大きく、世界全体の再生可能エネルギーに占めるバイオ燃料等の割合は76.7%(08年)である(22)
  なお、アメリカが、07年エネルギー法や08年農業法により、石油会社に対するバイオ燃料の使用義務付けや、農作物生産者やエタノール製造業者等に対する各種税制優遇措置・補助金等の支援措置を設けるなど、欧米においても、近年の原油価格高騰や地球温暖化対策等を受けて、再生可能エネルギーの供給を推進している。

(ii)再生可能エネルギーの供給拡大の取組
  増大している世界のエネルギー需要に対して安定的・持続的なエネルギー供給を確保するため、再生可能エネルギーの供給を増やす取組が行われている。
  IEA加盟国のエネルギー開発投資等の内訳をみると、再生可能エネルギーに対する投資は、90年前半の43億ドルから2000年後半には90億ドルと約2倍となっており、化石燃料関係37.1%増、原子力関係の7.7%減と比較して大幅な伸びとなっている(第1-1-31図)。
  このように、再生可能エネルギー開発は進展しつつあるが、その額はいまだ化石燃料関係や原子力には及ばず、2000年代後半で原子力投資が投資全体の4割弱を占める状況にある。
  再生可能エネルギー開発(23)への投資動向を国別・地域別にみると、アジア・オセアニア地域は、04年の37億ドルから09年には408億ドルへと大幅に増加し、そのシェアは世界全体の20.3%から34.2%と拡大している。アジア・オセアニア地域の中では、特に中国の投資額が大きい(09年337億ドル)。中国の投資額は、世界金融危機の影響により世界的に投資の勢いが弱まった09年にも前年比52.5%増と大幅な伸びとなっており、今後のエネルギー需要増を見据えて着実に取組を進めているとみられる。また、中国ほどではないものの、インド、ブラジル等新興国においても増加が続いている(第1-1-32図)。
  技術別にみると、バイオ燃料等への投資は07年には再生可能エネルギー開発全体の31.2%を占めるに至り、寄与度でみても05年、06年は高かった。その後は、風力や太陽電池・太陽熱への投資額が大幅に増加した。一方、バイオ燃料等への投資額が減少したことにより、バイオ燃料等のシェアは小さくなっている(第1-1-33図)。
  以上みてきたように、これまで再生可能エネルギーの開発が進められているが、現在のところエネルギー供給量全体に占める割合は増えていない。その理由としては、実用化に向けた技術開発への投資が中心で規模拡大に向けられていないことや、化石燃料に比べ資本集約的であることからコストがかかることが考えられる。
  仮に、世界のエネルギー需要増のペースを上回るペースで再生可能エネルギー供給が増加しなければ、依然として化石燃料中心のエネルギー供給構造から脱することができないといえる。

(2)資源リサイクルの動向

  鉱産物については、世界的な需要の増加や価格上昇の中で安定的・持続的に資源を得る手段の一つとして、各国において使用した資源の回収・再利用、いわゆる資源リサイクルが推進されている。
  鉱産物のスクラップといった循環資源に係る貿易量はこの10年で大幅に増えており、09年時点の取引量は、鉄スクラップが8,420万トン、銅スクラップが603万トンとなっている(第1-1-34図)。なお、世界の09年の貿易量は鉄鋼が2.8億トン、銅が2,052万トンとなっている。
  また、循環資源の価格と天然資源の価格との間に相関があり、両者が代替物の関係にあることがわかる。
  循環資源の輸出上位国は、アメリカ、日本、イギリス、オランダ、ドイツ等の先進国が中心となっている。一方、輸入上位国は中国、トルコ、韓国、インド等の新興国が中心となっている。これは、先進国は既に構築物等として存在する資源蓄積量が多いことから、リサイクルが可能な資源が多いことが考えられる。
  今後とも天然資源の需要増加と価格上昇が見込まれる中、代替物としての循環資源の需要も高まることが想定される。廃棄物の国際間取引について規定したバーゼル条約(24)の枠組みを維持していくことや、各国における品質検査体制の強化等を進めることにより、天然資源の需給がひっ迫する中で全体としての資源の安定的・持続的な供給に寄与するものと考えられる。


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