付注1:将来の潜在成長率の推計方法について
将来の潜在成長率を推計するに当たり、以下のようなコブ=ダグラス型生産関数を想定する。
Y=AK1-αLα
ここで、Y:生産量(GDP)、L:労働(就業者数)、K:資本ストック、A:全要素生産性(TFP:Total Factor Productivity)であり、αは労働分配率(0.67で一定と仮定)である。
将来のTFP、労働、資本ストックそれぞれについて増加率に関する仮定を置き、各系列の見通しを推計するとともに、生産関数を用いて将来の潜在成長率を推計する。
●各系列の将来推計に関する仮定
(全要素生産性)
全要素生産性は、実質GDPから労働と資本ストックの寄与を除いた残差(ソロー残差)とし、技術進歩等を始め、労働と資本ストックの寄与で説明できない要因はすべて含まれると考える。本推計では、先進国は1990〜2008年、その他の国・地域は2000〜08年の年平均伸び率が将来も続くと仮定する。ただし、一部の国・地域ではデータの制約から平均対象期間が異なる。
(労働(就業者数))
労働は、労働力人口から完全失業者を除いた就業者数のみとし、労働力人口の見通しに当たっては、2020年まではILOの労働力人口推計を用い、21年以降は国連の生産年齢人口推計(見通し)の伸び率を用いて将来の労働力人口を推計する。また、完全失業率は過去(1980〜2008年)の平均で推移すると仮定する。ただし、一部の国・地域ではデータの制約から平均対象期間が異なる。
(資本ストック)
日本以外の国・地域について、資本ストックは、1960年をベンチマークとし、除却率を5%と仮定した上で、ベンチマークイヤー法により推計する。将来の投資率(実質総固定資本形成/実質GDP)は、2030年時点において過去(1980〜2008年)の平均に収束するものとする。また、収束するに際し、先進国以外の国・地域は、投資率が労働力人口の変動の影響を受けるという前提に立って推計する(1)。また、データの制約から、稼働率は考慮していない。なお、一部の国・地域ではデータの制約からベンチマークの年や投資率の平均対象期間が異なる。
(「その他」の国・地域の推計)
第2-2-15表に掲げた22の主要国・地域以外については、過去の実質GDP成長率の平均値が将来も続くと仮定し、将来の潜在成長率は、先進国については1990〜2008年、その他の国・地域については2000〜08年の年平均伸び率で一定とする。
表 将来の潜在成長率推計に当たって利用したデータ及び将来のトレンドとして採用した平均対象期間一覧