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第3章 世界経済の見通しとリスク

第3節 アジア経済の見通しとリスク

2.経済見通しに係るリスク要因

   アジア経済の先行きに関しては、以下の上振れ、下振れの両方のリスクが考えられるが、リスクは下方に偏っている。

●下振れリスク
(i)先進国の景気後退の長期化
   欧米においては、金融危機と実体経済悪化の悪循環により、景気後退が長期化するリスクが高いが、この場合、国内市場の小さい韓国、台湾、シンガポール等において景気後退が長期化するおそれがあることに加え、中国の成長率についても、下振れするおそれがある。

(ii)金融危機の影響
   欧米金融機関の高レバレッジの解消が続くことにより、証券投資の流出や直接投資の減少が続き、海外からの資金調達が更に困難となることが懸念される。また、一部の国・地域では景気後退が深刻な状況にあることから、実体経済の悪化が、企業倒産の増加等を通じて、金融機関のバランスシートに悪影響を及ぼすリスクがある。この場合、アジアにおいても、金融危機と実体経済の悪循環が進行するおそれがある。

(iii)政情不安のリスク
   アジアにおいては、08年11月のインドでの大規模テロや08年12月のタイでの空港閉鎖等に示されるように、一部の国において政情が不安定となっている。仮に、こうした政情不安が長期化したり、更に高まったりする場合には、資金流出が発生し、投資への影響や、金融市場の混乱につながるリスクが懸念される。

(iv)デフレのリスク
   中国、台湾、タイ等では、このところ消費者物価が前年比で下落している。こうした物価下落が、世界的な需要不足とあいまって持続的な物価下落につながり、デフレ期待を生じさせる場合には、消費や投資の減退を通じて、実体経済を更に低迷させるおそれがある。

●上振れリスク
(i)中国の景気刺激策の効果とその波及
   中国の景気刺激策については、既に中国国内においては、固定資産投資の伸びが加速するなどの効果が現れているが、こうした景気刺激策の効果が経済全体に波及し、中国の内需が更に高まれば、中国の景気回復のテンポが速まるのみならず、中国向け輸出の割合が高い韓国、台湾等の経済に好影響を及ぼすことが期待される。

(ii)追加の景気刺激策の可能性
   インドでは、総選挙後の新政権において、追加的な景気刺激策の策定が進められている。今後も必要に応じ、各国において追加の景気刺激策が講じられ、景気を下支えすることが期待される。


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