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第3章 世界経済の見通しとリスク

第2節 ヨーロッパ経済の見通しとリスク

2.経済見通しに係るリスク要因

   先行きについては、金融危機と実体経済悪化の悪循環が続いていることから、不確実性が高く、先行きについては、リスクは下方に強く偏っている。

●下振れリスク
   上記のメインシナリオに反して、以下のような場合には、10年中も景気が持ち直さないおそれがある。

(i)金融市場と実体経済の悪循環の長期化
   アメリカ同様、金融安定化が実体経済回復の前提条件であるが、各国の金融システム安定化策により、金融市場の安定化が図られなければ、金融危機と実体経済悪化の悪循環が長期化し、景気後退が更に長期化するリスクが高い。

(ii)中・東欧経済の悪化
   中・東欧経済の悪化が更に深刻なものとなった場合、これらの国への貸出残高が多い西欧の銀行の不良債権が増大し、金融危機と実体経済悪化の悪循環が増幅される懸念がある。また、西欧の先進国は、貿易、投資など実体経済の面でも中・東欧経済と結びつきを強めており、中・東欧経済の深刻化により、ヨーロッパ全体が縮小均衡に陥るおそれがある。

(iii)雇用情勢の深刻化
   ヨーロッパにおいては、これまで失業率の増加が緩やかであったドイツ、フランス等でも失業率が顕著に上昇するなど、雇用情勢が急速に悪化している。主要国際機関の見通しでは、失業率は、10年には、ユーロ圏については11%台、英国でも9%台まで上昇すると見込まれているが、更に悪化した場合には、所得環境の悪化を通じて、個人消費を下押しすることが懸念される。

(iv)財政赤字拡大に伴う長期金利上昇
   金融危機発生以降、景気後退に伴う税収減に加え、財政刺激策等の実施に伴い各国で財政収支が悪化している。こうした財政収支の悪化により、既に、英国、スペイン、ポルトガル、ギリシャ等の金利が上昇しているが、景気後退の深刻化により財政が更に悪化した場合、更なる長期金利の上昇につながり、消費や投資が抑制されるおそれがある。

●上振れリスク
   上記のメインシナリオに反して、以下の場合には、10年前半から景気が持ち直す可能性もある。

追加的な政策対応の可能性
   欧州各国は、財政の自動安定化機能が大きいことなどを背景に、これまでのところ、追加的な財政刺激策には積極的な姿勢は示していないが、追加的な対策を講じる余地があると考えられる。また、金融システム安定化策については、不良資産買取りやストレステストの実施等追加的な取組が必要な状況にあることから、こうした対応が講じられた場合には、その効果が期待される。
 


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