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第2章 新興国経済:金融危機の影響と今後の展望


第5節 金融危機の影響が深刻化するロシア経済

4.今後のロシア経済の見通し

●国家管理強化への金融危機の影響
   2000年のプーチン政権発足以降から現在に至るまでのロシア経済で特徴的な点として、政府が経済の国家管理を強めてきたことが挙げられる。90年代初からのエリツィン政権下では、市場経済化の過程において、金融部門や産業部門で勢力を拡大してきたいわゆる新興財閥が、利益を独占的に獲得して富裕層を形成し、ロシア国内における格差拡大をもたらした。これに対し国民の不満が高まったことから、プーチン政権は民間企業の独占的利益を国家による管理の下で配分することを企図し、株式取得等を通じて次第に民間への介入を強めていった。
   08年の世界金融危機の影響により、民間の銀行や企業が信用収縮により資金繰りがつかなくなり、生産も停滞する中、政府は石油輸出収入により蓄積した資金による支援を通じて民間部門への介入を更に強める行動を取っている。
   今後のロシア経済の中・長期的方向として、こうした国家管理の下での経済運営へと進んでいくのか、あるいは、景気が回復してきた段階で再び民間部門の活力を重視した経済運営に再転換を図るのか、その動向が注視されるところとなっている。

●ロシア経済の今後の見通し
   ロシア経済発展省は、09年の実質経済成長率見通しを前年比▲2.2%としている(第2-5-15表)。これは、09年平均の想定原油価格を1バレル当たり41ドルと仮定した09年2月時点の見通しとなっている。その後、石油価格が上昇したこともあり、ロシア経済発展省は、世界的な景気回復が進んでロシア産石油への需要が増加してくれば、石油収入も再び増大し、外需を中心とした景気回復がおおむね10年頃から現れる、との見通しを描いている。
   他方、主要な国際機関によるロシア経済の見通しは、政府見通しより厳しいものとなっている。OECDは、09年平均の想定原油価格を45ドルとロシア政府(41ドル)より高く設定した上で、09年の実質経済成長率を▲5.6%とロシア政府より厳しい見通しを示している(09年3月)。世界銀行もほぼ同様に、想定原油価格を47ドルと仮定した上で、09年の実質経済成長率を▲4.5%と見込んでいる(同年3月)。IMFの見通しは更に厳しく、想定原油価格を52ドルと仮定した上で、09年の実質経済成長率を▲6.0%と見込んでいる(同年4月)。
   ロシアの今後の景気回復の見通しについては、世界的な景気回復に伴う石油価格の動向、あるいはロシア産石油への需要動向に大きく影響されるものとみられる。


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