まえがき
「世界経済の潮流」は、内閣府が年2回公表する世界経済に関する報告です。今回は、世界的な金融・経済危機の現況についての分析と、その下での世界経済の今後の見通しについて展望しております。
第1章の「先進国経済:金融危機による景気後退の深刻化」では、世界金融危機後の金融資本市場の動向について概観するとともに、欧米の景気の現状について分析しています。2008年9月におけるアメリカの大手投資銀行の破たんを契機として危機に陥った欧米の金融資本市場は、その後の各国の政策対応により、最悪の状況からは脱しつつありますが、依然として緊張状態が続いています。また、金融危機の影響は、実体経済にも広がり、2009年の世界経済は、戦後初のマイナス成長となることが見込まれています。こうした中で、本章では、今回の金融危機の震源地であったアメリカ及びヨーロッパについて、今後の景気をみて行く上で重要となるポイントについて、分析しています。
第2章の「新興国経済:金融危機の影響と今後の展望」では、欧米発の金融危機の影響を強く受けている新興国経済の現状について分析しています。新興国は、グローバル化の進展に伴い、金融面、実体面の両面において、先進国経済とのつながりを強めてきましたが、このことが欧米発の危機のインパクトを強めることとなりました。とりわけ、アジアでは、貿易の収縮を通じた実体経済への影響が、中・東欧では、欧州の金融機関の貸出縮小を通じた金融面への影響が顕著に現れています。他方、こうした金融・経済危機の中でも、中国及びインドは、相対的に高めの成長を維持しています。本章では、中国、インドについても個別に取り上げ、景気の現状を分析するとともに、持続的な成長に向けた課題についても明らかにしています。
第3章の「世界経済の見通しとリスク」では、第1章と第2章の分析を踏まえ、世界経済の先行きについて、想定されるシナリオを提示するとともに、そのリスクについて検討しています。
本書が、世界的な金融・経済危機に直面している世界経済の現状や今後の展望について、理解を深める一助となれば幸いです。
平成21年6月
内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)
齋藤 潤