第2章のポイント
1.アメリカ経済は、サブプラム住宅ローン問題を背景に景気は弱含み
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●アメリカでは、サブプライム住宅ローン問題による金融資本市場の混乱を背景に、07年の経済成長率は前年比2.2%と近年では低い成長率となった。足元では2四半期連続で1%以下の成長となり、景気は弱含んでいる。当面、住宅市場の調整や金融資本市場の混乱、資産効果のはく落や金融機関の貸出基準の厳格化等から、景気後退局面入りも懸念される。
●このため、住宅市場の安定化策、政策金利の大幅な引下げ、短期金融市場への流動性供給、個人所得税の戻し減税等の政策対応がとられている。
2.回復が緩やかとなるヨーロッパ経済
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●ユーロ圏では、消費、投資は堅調なことなどから景気回復が05年から力強さを増し、07年は2.6%の成長となった。英国でも金融セクターにけん引された内需を中心に07年は3.0%の成長となった。
●輸出、生産は堅調であるものの、住宅市場の調整や金融資本市場の混乱の影響、物価上昇等から、景気は07年秋以降減速している。
3.世界経済の減速の影響を受けつつも景気拡大が続くアジア経済
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●中国では、5年連続して10%を上回る成長を続け、07年には経済成長率は11.9%となり、景気拡大が続いている。しかし07年後半から成長率がやや鈍化する動きもみられ、これは世界経済の減速や政府による輸出・投資抑制策等の影響が一部現れているためとみられる。
●中国以外のアジア経済も 、07年は中国、アジア域内、ヨーロッパ向け輸出が比較的堅調に推移するとともに、良好な雇用環境を背景に内需も底堅く推移し、景気拡大が続いた。
4.世界経済の連関
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●東アジアでは、中国が、域内から中間財、資本財を輸入して加工・組立を行い、消費財をアメリカ、ヨーロッパ 等 の域外へ輸出する貿易構造(中国のハブ機能)が発展し、さらに近年は輸出の財別構成が多様化してきている。アメリカは最大の輸出先であり、アメリカ等の景気が減速する場合には、東アジア各国に、直接又は中国経由で間接的に、その影響が及ぶ可能性がある。
●2000年代においては、 世界経済全体としてアメリカ景気と連動して堅調に推移してきた。しかし、 08 年の世界経済を展望すると、アメリカの実体経済の減速、国際的な金融資本市場の混乱、資源・商品価格に先導された物価上昇の 三 つのショックの影響が重要であり、これらは世界の主要な地域の景気を押し下げる方向に作用すると考えられる。
5.2008年の世界経済
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●世界経済(日本に関係の深い32か国・地域)は、減速の動きに広がりがみられるものの、回復を続けている。08年は07年を下回る2.9%程度の成長が見込まれている。昨秋の時点のものと比較すると、アメリカについては2.4%程度から1.4%程度へと下方修正されているのを始め、各地域とも下方修正されている。
●国際金融資本市場が早期に一段と安定化する 等 の場合には 中心シナリオより力強い回復となる可能性もあるが、(1)国際金融資本市場の混乱の長期化・深刻化、(2) 一次産品等の価格の高止まり・一層の高騰、 (3)アメリカ景気の予想以上の下振れ、 (4) 中国経済の調整、といった下方リスクもある。
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