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まえがき

   世界経済の潮流」は2002年春に創刊され、年2回公表しております。第11号にあたる本書は2部から構成され、第I部では、先進各国における就業支援に向けた取組ついて、また、先進各国の生産性等の動向について、それぞれ分析を行いました。第II部では、2007年の世界経済の見通しについて分析を行っています。
   第I部第1章は「多くの人が活躍できる労働市場の構築に向けて」と題し、各国・地域の特徴的な取組を交えつつ、就業支援のための政策について検討しています。その中で、まず、経済政策全体について、市場メカニズムを活用した構造面からの競争力強化や安定的な経済成長により、就業機会を拡大していくことが重要であるとしています。また、英国における若年者の就業への取組、アメリカや英国で導入されている就労を条件とした税額控除制度、フランスにおける女性の就業への取組等の事例を概観し、多くの人が活躍できる労働市場の構築という目標に向けて、様々な政策に総合的に取り組むとともに、各政策が整合的に行われることが重要であるとしています。
   第2章の「先進各国の生産性等の動向」では、先進各国の生産性の動向等を概観しています。90年代後半以降IT化によりアメリカの生産性上昇率は加速し、「第二の波」とも呼ばれるように2000年代に入ってさらに加速しています。ITを利用した生産性向上の成果がアメリカでいち早く結実した背景としては、規制が緩やかで自由な市場が存在したことが大きな要因と考えられます。また、英国、フィンランド、アイルランドなどにおいても、規制改革や労働市場の改革等により、生産性の向上と成長力強化に成功しています。日本でも、各国の経験に学び、経済財政諮問会議で本年6月に取りまとめる「基本方針2007」などに基づき、成長力の強化のために求められる具体的な対応を各分野でスピード感を持って進めることが重要と考えます。
   第II部では「世界経済の見通し」として世界経済の展望を扱っています。2007年の世界経済は回復が続くものの、アメリカ経済が減速するとともに、他の地域の成長も緩やかになることによって、06年をやや下回る成長になることが見込まれます。こうした中心シナリオに対する先行きリスクとしては、(i)アメリカ経済の一層の減速、(ii)原油価格の再高騰、(iii)為替レートの急速な調整等金融市場の大きな変動が挙げられます。
本書が、先進国における労働市場の現状と課題や生産性等の動向、さらには世界経済の展望について理解を深める一助となれば幸いです。

 平成19年6月

内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)
高橋 進


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