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まえがき

  「世界経済の潮流」は2002年春に創刊され、以後年2回公表しております。第7号にあたる本書は2部から構成され、第I部では人民元切上げ論を切り口とした中国経済の現状と課題、及び先進国に共通する流れである官から民について、諸外国の先進事例を分析しました。第II部では2005年の見通し、及び世界経済に関するトピックとしてIT市況、及びヨーロッパにおける住宅ブームについて分析しています。
  第I部第1章「中国経済の持続的発展のための諸課題」では、78年末の「改革・開放」以降わずか四半世紀で急速な発展を遂げた中国経済が、次第に対外的摩擦を拡大し、諸外国から為替制度の変更を求められるまでに至った背景と共に、高成長に隠れた形となっている国内市場の構造問題について分析しています。現行の為替制度が維持可能でないことは中国政府自身も認識しており、より柔軟な為替制度への移行を検討している旨明言しています。その背景には、事実上資本取引規制が効かなくなるなか、金融政策の独立性の確保が困難となる一方で、国内経済のひずみが放置できない程度に至っているということがあるものとみられます。持続的な成長を実現するためには、そうしたひずみを是正し、中長期的には種々の構造問題を解決していく必要があることを指摘しています。
  第2章の「官から民へ」では、80年代より、多くの先進国が抱える共通の課題である財政赤字の縮減に資する形で始まった民営化の流れが、90年代以降、より良質のサービスを効率的に供給しつつ、顧客である国民の満足度の向上を図るという目的へと進展してきた背景を分析し、諸外国における各種取組事例について紹介しています。その中には、単にコスト削減にとどまらず、新たなビジネス機会や雇用の創出につながった事例も見られます。成功した先進事例からは、公共部門の縮小を伴う場合の雇用面の対応、及びサービス供給を行いうる民間部門の存在の二点が重要な鍵を握っていることが浮かび上がってきます。
  第II部では世界経済の展望を扱っています。2005年の世界経済も引き続き米国及び中国経済によってけん引されており、前年よりは成長率は低下するものの、着実な回復を続けるものと見込まれます。リスクとしてはこれら米・中の経済動向に加え、原油価格の高止まりや双子の赤字の為替による調整、人民元の大幅な変動等が存在します。その他、トピックとして、調整局面が続くIT市況の動向とヨーロッパにおける住宅ブームについて取り上げています。
 本書が中国経済や民営化への取組み、さらには世界経済の展望について理解を深める一助となれば幸いです。                 

 平成17年6月

内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)

大田 弘子


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