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第I部第2章のポイント

1.産業再生とは

●産業再生とは、政府が債務超過企業の事業再生を大規模に主導・支援することを指す。北欧・アジア危機諸国は政府主導で公的資産管理会社を設立し、産業再生に取り組んだ。アジア諸国はまた、ロンドン・アプローチの推進にも取り組んだ。
● 資産管理会社を設立して金融機関から不良債権を移管する方法は、「良い銀行、悪い銀行」アプローチと呼ばれる。これにより、金融機関はバランスシートを直ちに改善させることができ、資産管理会社は専門的・効率的に事業再生(もしくは債権等取得資産の早期売却)を進めることができる。
● アジア危機諸国は、債務者企業の支援等を要請する私的整理原則のロンドン・アプローチを調停委員会の設立などを通じて積極的に推進した。この結果、多くの不良債権が私的整理によって処理されている。

2.北欧・アジアの産業再生

●スウェーデンでは、90年代初めの金融危機に際して、国有化したノルド銀行の不良債権を買取る「悪い銀行」として公的資産管理会社(セキュラム)を設立した。セキュラムは、不良債権を査定した上で買取り、取得した資産の事業再生を迅速に進めた。査定には専門知識を有する米系の外資企業が活用された。
● フィンランドでは、90年代初めの金融危機に際して、公的資産管理会社(アーセナル)を設立し、「悪い銀行」グループを形成させた。その際、種類や規模にかかわらず不良債権を買取らせたため、事業再生は困難であったとされる。
● 韓国では、97年のアジア危機に際して集権的な公的資産管理会社(韓国資産管理公社(KAMCO))を設立し、大規模に不良債権の買取りを進めた。99年以降は融資機能が付加されるなど、事業再生に重点が置かれている。また、政府指導のもとで金融機関主導のワークアウト(再建型私的整理)も進められた。
● マレイシアでは、97年のアジア危機に際して集権的な公的資産管理会社(ダナハルタ)を設立した。ダナハルタは、債務者企業に特別管財人を任命して資産を保全し、企業の再建計画を策定させるなどの強力な買取り・事業再生の権限が与えられた。また強力に調停を行う企業負債再編委員会(CDRC)が設立された。
● なお、アメリカでは民間での事業再生が活発である。80年代後半のS&L危機に際して設立された整理信託公社(RTC)は、資産を民間に売り渡す役割を果たし、これにより民間の事業再生ビジネスが拡大した。また、再建型の倒産法制であるチャプター11も、民間の事業再生に大きく貢献している。

3.産業再生成功の条件と産業再生機構

●海外主要国の経験からは、産業再生成功の条件として、(1)市場価格による不良債権買取り、(2)債務者企業の資産保全、(3)事業再生のための資金供給、(4)専門知識の活用、が重要であるといえる。
● 5月に業務を開始する我が国の産業再生機構では、不良債権の買取りは市場価格によるほか、債権の集約化を進める中で債務者企業の資産保全も図られる。また、再生資金の確保、民間叡智の活用にも努める予定である。産業再生機構の創設で日本経済の再活性化が期待される。

第I部 第2章のポイント

第2章 産業再生−北欧・アジアの経験

 不良債権処理の加速とならび、産業再生を通じて新たな成長分野を開拓することが、我が国経済の重要課題となっている。
 我が国は、昨年10月の「改革加速のための総合対応策」において、金融機関の不良債権処理の加速化に併せ、産業・金融一体となった対応を進めるため、企業・産業の再生を政府として強力に推進する一環として、企業再生に取り組むための新たな機構を創設することとし、これに基づいて本年4月に株式会社産業再生機構が発足したところである。
 不良債権処理については海外主要国の事例がこれまでにも多く紹介されているが、特に産業再生への取り組みに焦点を当てたものは少ない。本章では、海外主要国の事例の紹介を通じて、我が国の産業再生への視座の提供を試みる。


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