第I部第2章のポイント ●産業再生とは、政府が債務超過企業の事業再生を大規模に主導・支援することを指す。北欧・アジア危機諸国は政府主導で公的資産管理会社を設立し、産業再生に取り組んだ。アジア諸国はまた、ロンドン・アプローチの推進にも取り組んだ。
●スウェーデンでは、90年代初めの金融危機に際して、国有化したノルド銀行の不良債権を買取る「悪い銀行」として公的資産管理会社(セキュラム)を設立した。セキュラムは、不良債権を査定した上で買取り、取得した資産の事業再生を迅速に進めた。査定には専門知識を有する米系の外資企業が活用された。
●海外主要国の経験からは、産業再生成功の条件として、(1)市場価格による不良債権買取り、(2)債務者企業の資産保全、(3)事業再生のための資金供給、(4)専門知識の活用、が重要であるといえる。
|
第I部 第2章のポイント |
第2章 産業再生−北欧・アジアの経験
不良債権処理の加速とならび、産業再生を通じて新たな成長分野を開拓することが、我が国経済の重要課題となっている。
我が国は、昨年10月の「改革加速のための総合対応策」において、金融機関の不良債権処理の加速化に併せ、産業・金融一体となった対応を進めるため、企業・産業の再生を政府として強力に推進する一環として、企業再生に取り組むための新たな機構を創設することとし、これに基づいて本年4月に株式会社産業再生機構が発足したところである。
不良債権処理については海外主要国の事例がこれまでにも多く紹介されているが、特に産業再生への取り組みに焦点を当てたものは少ない。本章では、海外主要国の事例の紹介を通じて、我が国の産業再生への視座の提供を試みる。