<2001年の経済>
2001年の経済成長率は前年比1.5%となり、96年の1.4%以来の低い成長となった。これは、世界的な景気減速の中で、ユーロ圏のGDPの7割以上を占めるドイツ、フランス、イタリアの3か国において成長率が大きく落ち込んだためである。ユーロ圏全体で個人消費の伸びがやや低下し、固定投資の伸びはマイナスとなった。2001年10〜12月期の成長率は前期比年率0.7%減になり、93年1〜3月期の2.8%減以来約9年ぶりのマイナスとなった。
<2002年の経済見通し>
欧州委員会では、ユーロ圏の景気減速は2001年10〜12月期が底になるとみている。2002年には景気は上半期に横ばいから微増で推移した後、下半期に回復へ向けた動きが強まるとの見方が多い。アメリカの景気回復に伴ってユーロ圏域内からの対米輸出が増加し、生産が持ち直す要因になるとみられている。物価上昇率は年内に2%を下回ると欧州中央銀行及び欧州委員会は予測しているが、原油価格の上昇やドイツの春闘における賃上げの動向が懸念材料となっている。
民間機関23社の2002年の平均成長率見通しは1.2%(2002年4月時点)となっており、半年前(2001年10月時点1.8%)に比べて下方修正されている。
<金融政策の動向>
欧州中央銀行(ECB:European Central Bank)は、2001年5月以降11月までに4度にわたり利下げを行い(合計1.5%ポイント)、政策金利を3.25%とした。世界経済の減速が続くなか、年央にはユーロ安や原油高等の外的要因と家畜伝染病の影響による食料品の高騰からユーロ圏内の消費者物価上昇率が前年比で3%に達し、ECBの目標である2%以下を大きく上回るなど、一層の金融緩和は難しい状況にあった。2001年11月の利下げについては、ECBは、インフレ圧力がこのところ低下してきており、中期的な経済の安定を図るため利下げに踏み切ったとしている。こうした金融緩和の動きは、輸出低迷を主因に減速したユーロ圏経済の下支えにつながったとみられる。
またECBは、月2回開催される定例理事会において、政策金利決定は原則として各月の前半の理事会で討議する方針を明らかにした(2001年11月)。