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第I部 世界に学ぶ−日本経済が直面する課題への教訓

第1章 活力を高める税制改革 −アメリカ、イギリス、スウェーデン

第4節 経済活力の増進に向けて

 本章では、欧米先進諸国のうちアメリカ、イギリス、スウェーデンの80年代以降の税制改革を概観した。いずれの国においても、経済活動に中立的な税制を目指して中長期的な経済活力の増進を図ろうとするなかで、税負担軽減の誘因に着目して特定の分野に限って経済活性化を図った税制も併せて展開されていることが明らかとなった。
 税制の中立化は、税のくさびを低下させ、市場メカニズムに従った経済の効率化を促進し、中長期的な経済活力の増進に資すると考えられる。さらに、特定分野について税のくさびを低下させる政策にも、経済活性化に向けた役割が期待されている。既存研究からは、成長を支える要因を個々に促進する税制が、部分的ではあるが比較的短期間に効果を表している可能性が示唆された。
 税負担軽減の誘因を過度にもたらす税制は効率性を阻害するとの議論もあるが、市場の失敗が生じる分野では、必ずしも効率性の阻害とはならない。研究開発投資等、外部性が認められるものへの優遇税制はその好例であろう。税制は平均的な税負担として経済に影響を与えるだけでなく、所得・収益や価格・費用に限界的に働きかけて、家計や企業の行動に影響を与えることができる。このため、税制の誘因に着目することは、経済の活力を内側から高めることができる有効な経済政策の手段のひとつとして考えられる。
 税負担の限界的な変化が経済活動に与える影響を重視して、税制デザインを策定することが、経済の国際化が進展する中で重要性を高めている。現在、企業活動は国境を越えて行われているが、税制は各国政府の裁量に委ねられている。資本や労働の流動性が高まりつつあることを踏まえ、国際的な観点から税制を整備することがますます求められている。市場経済における人々や企業の選択を歪めない税制に向けた改革を行い、経済活力を高めていくことが重要な課題である。


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