第1章 米国の通商政策による世界経済への影響
第二次トランプ政権発足から2026年1月20日で1年となる1。第二次トランプ政権においては政権発足直後から100日も経たずに100本以上の大統領令が署名されるなど、その政策動向には世界中から高い関心が向けられたが、とりわけ世界経済に大きな衝撃を与えたのが、通商政策であった。
トランプ大統領は就任以前から、拡大傾向にある米国の貿易赤字は他国との不公正な貿易構造によって生じているとの考えの下、米国の偉大さを取り戻すためにも貿易赤字の是正は喫緊の課題であると大統領選の中でも訴えていたところであった2。そして就任以降、国別及び品目別の追加関税措置を発動する中で、2025年4月2日、全ての貿易相手国を対象とする、いわゆる「相互関税(Reciprocal Tariff)」の発動を発表し、過去に類をみない広範かつ高税率の追加関税措置を世界に示した。米国は、世界のGDPの約4分の1を占める世界第一位の経済大国である。こうした前例のない高関税措置は米国経済のみならず世界経済全体に大きな影響を与えることは必定であり、ひいては第二次世界大戦後に米国が中心となって構築してきた自由で開かれた国際貿易体制も大きく揺るがされることになる。世界経済の動向をみていく上で、こうした通商政策の動向には高い関心をもって注視していく必要がある。
このような情勢に鑑み、昨年8月に公表した「世界経済の潮流2025年Ⅰ」では、主に米国の貿易構造について整理しながら、おおむね2025年前半までの通商政策の動向を概観した。本章では、これまでの米国の通商政策の動向を整理した上で、その政策動向が米国経済及び世界経済に及ぼす影響について分析する。
本章の構成は以下のとおりである。
第1節では、米国の通商政策の動向について、主な経緯を時系列で振り返りながら、2026年1月時点での各種関税措置の概況を整理する。
第2節では、貿易面・物価面を中心に、通商政策が米国経済に及ぼす影響を分析する。
第3節では、通商政策が米国以外の各国・地域経済に及ぼす影響について、米州(カナダ、メキシコ)、アジア及び欧州の主要地域別を対象として分析する。
第4節では、米国の通商政策が世界経済に及ぼす影響について、多地域型マクロ経済モデルを用いた試算結果も踏まえながら総括する。
(1) 外国製商品への基本関税(Baseline Tariffs on Foreign-made Goods)の支持
(2) いわゆるトランプ互恵通商法(Baseline Tariffs on Foreign-made Goods)の成立