第1章 中国経済が世界経済に与える影響(付注1-2)

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付注1-2 「過剰供給」により価格が低下することの経済学的背景

1.前提

ある財(以下「財x」という。)について、A国と世界(A国を除く)の2市場からなるモデルを考える。A国は大国であり、その輸出量の変動は、財xの世界市場の価格に影響する。

2.考え方

図1は初期の均衡状態を示している。財xについて、A国ではACの生産が行われるが、国内需要はBCとなるため、ABは輸出される。世界の需要はCE、うちCDは世界で生産されるがDEはA国からの輸入となる。DEとABが一致するように国際価格P1が決定される。

図1 初期状態

次に、A国で不動産市場の停滞によって財xの需要が減少し、需要曲線がDAからD'Aに左シフトしたと仮定する(図2)。その場合、国際価格がP1のままではA国から世界への輸出が増加し、IM<EXA'となるため需給が均衡しない。

図2 需要曲線が下方シフトした場合

このとき、国際価格がP2に低下することで、A国及び世界の生産が減少、A国及び世界の需要が増加する結果、IM''=EXA''となり、財xの需給が均衡する(図3)。

よって、その他の条件が変わらなければ、大国であるA国の需要減退(需要曲線の左シフト)によって、①A国から世界への輸出の増加、②A国の国内向け生産の減少、③(A国以外の)世界生産の減少、④国際価格の低下、が引き起こされる。

図3 国際価格の下落による需給の均衡

第1章第2節では、A国における不動産市場の停滞による需要減退(需要曲線の左シフト)前後の財xの需要量の差(図3のB''X)を「過剰供給」と捉えて個別財の「過剰供給」について議論を行う。

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