第1章 2023年後半の世界経済の動向
本章では、2023年後半の世界経済の動向について分析する。
第1節では、欧米の景気動向について分析する。欧米では、物価上昇率が輸入物価の下落等を受けて低下傾向となっている。こうした中、アメリカにおいては、実質賃金の上昇や家計のバランスシートの改善等を背景として消費が増加するなど、景気は回復している。一方、ユーロ圏や英国においては、実質賃金は改善が続いているものの、金融引締めを受けて消費者マインドが悪化したこと等から、消費に弱さがみられるなど、景気は弱含んでいる。
第2節では、中国の景気動向とバランスシート調整について分析する。2023年年初に新型コロナウイルス感染症(以下「感染症」という。)が収束し経済活動の正常化が進んだものの、引き続き不動産市場の低迷等から生産・消費の回復テンポは緩やかであり、物価上昇率はゼロ近傍で推移し、景気は持ち直しの動きに足踏みがみられている。また、感染症の拡大と不動産市場の低迷を受けて企業のバランスシート調整が進み、製造業投資等の減速がみられている。
このように、ユーロ圏や英国といった一部の地域において弱さがみられるものの、アメリカでは景気回復が続いており、中国もこのところ足踏みがみられるものの、持ち直しの動き自体は維持されていることから、世界の景気は、一部の地域において弱さがみられるものの、持ち直している状況にあると考えられる。
第3節では、以上の分析を踏まえて、世界経済のリスク要因について整理する。