第2章 ASEANの貿易構造と特定国への依存リスク軽減の動き

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第1章で確認したように、世界の財貿易量については、半導体の需要鈍化の影響や、中国経済の減速等を受けて2022年後半は横ばいで推移している。

一方で、中長期的な貿易動向に着目すると、ASEAN135諸国は、発展段階に応じて各国が高い成長率を維持する中で、貿易面では更にペースの早い拡大がみられており、背景の一つにはサプライチェーンの継続性(加えて米中貿易摩擦)の観点からの代替的な生産拠点の確保(いわゆる「チャイナ・プラスワン」)の動きがあると考えられる。本章では特にASEAN諸国とアメリカ及び中国との貿易面の相互依存関係や、特定国からの供給に依存する品目の状況等について分析を行う。続いて直接投資の動向を通じて、第1章でも指摘したサプライチェーンにおける特定国への依存リスクの軽減に向けた動きについて分析する。最後にASEAN諸国に対する諸外国の関係強化の動きを概観する。


135 東南アジア諸国連合(Association of South East Asian Nations)。東南アジアの10か国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)で構成される。ASEANは、2022年11月11日、東ティモールを11番目の加盟国として承認することで原則合意したと発表したが、本稿では、執筆時点(2022年12月末)の正式な加盟国である10か国を表す。

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