第1章 世界経済の減速と金融政策の課題

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2018年から続く米中間の貿易摩擦の影響下で、19年後半の世界経済は減速するに至った。米中両国が実施した追加関税措置だけでなく、両国間の貿易協議をめぐる不確実性により、世界的な財貿易の縮小や生産・投資活動の停滞が生じている。製造業におけるグローバル・バリュー・チェーン(GVC: Global Value Chain)の進展も、こうした縮小や停滞の動きを加速させているとみられる。

19年後半はまた、世界経済の減速を受けて多くの中央銀行が金融緩和に転じた時期でもあった。アメリカやユーロ圏では、世界金融危機や欧州政府債務危機を経て金融政策の手段が変化する中で、低金利・低インフレ率が続くなど、経済構造の変化への対応が課題となっている。中国では、小規模・零細企業の資金調達環境の改善とともに、金融市場の発展に応じた政策枠組みの確立が求められている。

本章ではまず、米中貿易摩擦下における今般の世界経済の減速局面の特徴を明らかにした上で、アメリカ、ユーロ圏、中国における金融政策動向を概観し、それぞれの中央銀行が直面している課題を整理する。

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