第1章 米中貿易摩擦と高付加価値化が進む中国経済

[目次]  [戻る]  [次へ]

2018年は通商問題の動向が世界経済のリスクとして強く意識される年となった。特に18年3月にアメリカ政府が鉄鋼・アルミニウムへの追加関税を発動して以降、複数のアメリカの貿易相手国がそれに対する対抗措置を発動する状況に陥っている。世界のGDPの第1位と第2位の割合を占めるアメリカと中国間でも、18年4月にアメリカ政府が中国による知的財産権の侵害等を理由として中国からの輸入品に追加関税を課すことを発表して以降、お互いが次々と貿易制限措置を実施する状況に至ったため、その世界経済への影響が懸念されている。

本章ではまず、米中間で貿易摩擦が生じた背景とこれまでの経緯を概観し、次に、その経済への影響について考察する。最後に、米中両国の貿易構造の変化をグローバル・バリュー・チェーンの観点から確認し、米中貿易摩擦の影響への含意についての考察を試みる。

[目次]  [戻る]  [次へ]