第1章 第1節
中国経済の減速と世界経済
1.下方修正の続く世界経済
世界の景気は、中国を始めとするアジア新興国等では弱さがみられるものの、全体としては緩やかに回復している。
アメリカでは、15年1~3月期にはドル高や原油価格下落の企業部門へのマイナスの影響等もあって成長がやや減速したものの、雇用・所得環境の改善が続く中で個人消費が堅調に推移しており、景気は回復が続いている。ユーロ圏では、失業率が高水準ながら緩やかに低下する中で実質所得が増加することで個人消費が好調に推移し、景気は緩やかに回復している(第1-1-1図(1))。
一方、新興国に目を向けると、中国では、投資や輸出、生産が弱い動きとなるなど、景気は緩やかに減速している。中国経済減速の影響を受けて、アジア新興国の景気もやや減速している。ブラジルやロシアでは資源価格下落の影響に加えて、政治的な要因などもあってマイナス成長が続いており、景気は悪化している。一方、インドでは内需が好調であるため、景気は持ち直している(第1-1-1図(2))。
IMFは、15年の中国の成長率見通しを段階的に引き下げ、本年4月には前年比6.8%としたものの、その後は据え置いている。一方で世界全体の成長率見通しは、14年4月時点では3.9%だったが、その後公表のたびに下方修正され、15年10月時点の見通しでは3.1%となっている。(第1-1-2表)。その要因としては、韓国やASEANなどのアジア諸国に中国経済減速の影響が予想以上に及んだことや、商品価格の低下等を背景にブラジルやロシアの経済の落ち込みが想定よりも大きくなったことが挙げられる。
中国政府は15年の実質経済成長率の目標値を7%前後と定め、14年の目標である7.5%成長よりも低い目標を設定していた。実際の成長率は、15年1~3月期、4~6月期のいずれも前年同期比7.0%、7~9月期が同6.9%とおおむね政府目標に沿って推移している(第1-1-3図)。
個々の経済指標をみると、固定資産投資、生産はいずれも期を追うごとに前年比の伸び率が低下している(第1-1-4図、第1-1-5図)。輸出金額は15年4~6月期、輸入金額は14年10~12月期から前年比でマイナスに転じている。輸入金額は15年に入って大きく減少しているが、内需が弱いことに加えて、原油価格下落に伴い鉱物性燃料の価格が低下していることも影響している(第1-1-6図)。
2.意識される中国リスク
中国経済が実体面で緩やかに減速する中で、金融市場では急激な変動が生じた。
上海株価指数は14年10月頃から上昇し始め、15年6月12日に世界金融危機後の最高値(5,166ポイント)をつけた。その後株価は下落に転じ、8月26日(2,927ポイント)までに約43%の急落となった。このような状態について、周小川中国人民銀行総裁は、G20財務相・中央銀行総裁会議(15年9月)において「6月中旬以前、中国の株式市場はバブルが絶え間なく蓄積していた1」と発言している。
この間、8月11日の人民元の切下げに端を発し、世界の金融市場は大きく動揺した(第1-1-7図)。人民元の切下げは対元の基準値のある11通貨に対して11、12、13日と3日連続で実施され、主要通貨に対する切下げ幅は対ドルで▲4.6%、対ユーロで▲5.6%、対円で▲3.7%となった。切下げの理由について、中国人民銀行は、基準値を市場実態に合わせた算出方法(市場の前日終値等を参考に決定)に変更するものであると説明したが、7月の輸出が前年比▲8.3%と大幅に減少したことに対する措置であるとの見方も多い。
8月21日には、民間機関が実施するPMI(製造業購買担当者指数)の速報値が47.1と、09年3月以来の低水準になったことにより中国経済の減速が更に投資家に意識され、上海市場の大幅な下落が世界的な株安にまで波及した(第1-1-8図、1-1-9図)。投資家心理を反映するとされるVIX指数2は、不安心理が高まった状態の目安となる20を超え一時40台を付け、世界金融危機後最大の値を記録した(第1-1-10図)。
人民元切下げの背景には、短期的に素早く動く資金、いわゆるホットマネーの動きがある3。中国のホットマネーは14年後半頃から流出が続いており、内外の投資家が中国市場から資金を引き揚げていたことが分かる(第1-1-11図)。ホットマネーの流出は元安要因となるものであるが、中国人民銀行は資金流出を防ぐための元高誘導を行っていたと言われている。これは、中国の外貨準備が減少傾向となっていることからもみてとれる(第1-1-12図)。
いわゆる「国際金融のトリレンマ」によると、(1)独立した金融政策、(2)為替相場の安定(固定相場制)、(3)自由な資本移動の3つの目標を同時に全て満たすことは不可能であり、どれか1つの目標を放棄しなければならない。中国は後述するとおり資本移動の自由化を漸進的に進めてきている一方で、為替は管理フロート制を採っている。中国は14年11月以降6回にわたって利下げを行っているが、資本自由化を進める中、金融政策に効力を持たせるためには、為替相場を市場に委ねることは不可避であり、外貨準備を用いた元の買い支えには限界がある。
海外投資家が中国経済への懸念を強めた一因に、中国のGDP統計が経済の実体を正確に把握できていないといった統計の信任の問題が指摘されている4。このため、GDP統計の代わりに、いわゆる「李克強指数」が用いられることがある。同指数は電力消費量、鉄道輸送量、中長期貸出残高の3指標から構成され、これらを合成した指数を作成すると、GDP成長率よりも急速に低下していることが見てとれる。一方、これらの3指標は製造業の動向を把握することには適しているものの、サービス業等への移行が急速に進む中、経済全体の動向を把握するには適していないとの指摘もある。例えば、中国の物流の多くが陸上輸送に移行してきているため、鉄道輸送量を貨物輸送量全体に置き換えた試算値を作成すると、低下傾向に変わりはないものの、低下のペースは緩やかなものになる(第1-1-13図)。
3.中国経済下振れの影響
世界経済は、世界金融危機以降14年までは、先進国経済が伸び悩む中、中国及び新興国経済がけん引してきた(第1-1-14図)。しかし、15年はアメリカやヨーロッパ経済が回復する中で、中国経済の減速がアジア新興国等を中心に景気の下押し要因となった。アメリカ及びヨーロッパ経済の回復に支えられ世界経済は全体としては緩やかに回復しているものの、中国を始めアジア新興国等の経済の先行きは依然としてリスク要因となっている。
IMFの試算によると、中国経済が1%減速した場合、アジア地域及びアジア以外の地域の成長率はそれぞれ0.33%ポイント、0.17%ポイント程度押し下げられる。アジアの中でも、中国と関係の深いASEAN諸国へのマイナスの影響はアジア全体よりも若干大きく出ることが見込まれている。また、OECDは、中国の内需が2年にわたって2%ポイント低下し、世界の株価が10%下落するとともに株式のリスクプレミアムが0.2%ポイント上昇した場合、世界の実質経済成長率は初年度で0.4%ポイント、次年度は0.5%ポイント程度押し下げられ、日本については、初年度0.55%ポイント、次年度0.62%ポイント程度押し下げられると試算している(第1-1-15表)。
(1)貿易面への影響
(アジア新興国・資源国等の中国依存の高まり)
中国の貿易は輸出輸入ともに01年12月のWTO加盟以降加速度的に増加し、世界貿易の中で大きな地位を占めるようになっている。輸出は09年以降世界一を維持しており、輸入もアメリカに次ぐ第2位となっている。
中国の輸入は、2000年代には前年比20%近い勢いで増加を続け、世界金融危機の影響で一時的に減少したものの、11年まではこのペースを維持していた。品目別にみると、2000年代は中国内需の拡大と加工貿易用の輸入により、電気機器・一般機械が大きく寄与していた。その後、人民元の上昇、生産拠点の移転などにより、加工貿易用の輸入が減少したことに加えて、内需も伸びが鈍化したために、電気機器・一般機械の輸入は急速に鈍化した。
一方、鉱物性製品の輸入も10年、11年には高い伸びとなった(第1-1-16図)。鉱物性製品の輸入は中国の需要増加を反映して大幅に増加し、世界の資源消費に占める中国のシェアは年を追うごとに上昇した(第1-1-17図)。
この結果、中国の資源輸入において上位を占める国では、輸出の中国依存度が年を追うごとに高まっている(第1-1-18表)。その中には比較的経済規模の小さい国も多く含まれており、中国の動向に経済が左右される国が増えてきていることが分かる。
資源国以外の国でも中国への輸出依存度が高まる傾向がみられる(第1-1-19図)。先進国においても程度の差はあれ、中国への輸出依存度が高まっている。
輸出の中国依存度が高まっていることに加えて、日本・中国・韓国・ASEAN域内の貿易・投資関係も強まっている。
貿易関係をみると、01年から14年までの間に中国以外の各国・地域では、中国やASEANへの輸出比率が高まったことから、域内での貿易比率が大幅に上昇している。一方、中国は域内貿易比率が低下しており、代わりに中東、アフリカ、中南米への輸出が増加している(第1-1-20表)。
投資関係をみても、07年から12年までの約5年の間に域内での関係が深まっている(第1-1-21表)
前述のとおり、中国の資源消費が世界に占める割合は上昇しており、中国の内需の減速と資源輸入の減少は資源価格の下落要因となっているとみられる(第1-1-22図)。
そのため、中国への輸出依存度の高い国・地域では、中国への輸出の減少を通じて中国経済減速の影響が既に表れている(第1-1-23図)。とりわけ、台湾やオーストラリアでは、これまで中国への輸出が成長のけん引役であったものの、現状では逆に成長のマイナス要因となっている。
輸出の減少が著しいオーストラリアと台湾について財別に中国への輸出をみると、オーストラリアは鉱物資源が大幅に減少しており、中国の需要減に加え、鉄鉱石の価格低下の影響が表れているとみられる。一方、台湾では石油製品や光学機器等が減少している(第1-1-24図、第1-1-25図)。
(過剰生産業種の影響)
後述するように、中国経済は生産過剰問題を抱えており、これを輸出増加によって解消しているという指摘がある。
いわゆる過剰生産4業種(粗鋼、板ガラス、セメント、アルミニウム)について、生産動向をみると、アルミニウムは15年に入って前年比で大きく増加しているものの、粗鋼や板ガラス、セメントは前年比マイナスで推移している(第1-1-26図)。
一方、輸出動向をみると、粗鋼の輸出は14年以降増加が続いており、直近の15年9月でも30%以上増加している。板ガラスやセメント、アルミニウムは前年比でマイナスとなっている。
以上より、過剰生産業種のうち、粗鋼については国内の過剰生産を輸出に振り向けている可能性が示唆される。粗鋼を含む卑金属の輸出価格は、14年10~12月期以降、前年同月比でおおむね低下しており、中国の粗鋼生産が世界全体の約半分(49.4%、14年)を占める中5、中国の粗鋼の輸出増加は各国の鉄鋼メーカーに影響をもたらしている。例えば、アメリカでは大手鉄鋼メーカーは中国からの輸入品増加等の影響により、15年1月に大規模なレイオフに踏み切った。中国の輸出攻勢に対して、南アフリカのように、ダンピング認定に踏み切り関税引上げを講じる国も出てきている。
(2)金融面でも高まる中国の影響力
上海株式市場の時価総額は14年後半から大きく拡大し、15年4月には一時的に東京市場を抜いて世界2位となったが、10月時点では東京市場と同程度となっている(第1-1-27図)。上海市場の規模が大きくなるにつれて、日経平均やDAX指数は上海株価指数に相関するようになってきている(第1-1-28図)。
中国の株価は、14年後半から15年6月にかけて、信用取引を伴う投資家の新規参入によって大きく上昇した。代表的な株式市場である上海証券取引所の口座数は14年5月末から15年5月末の間に約24%増加し、その間、信用口座数は約350万件から700万件以上へ、信用融資残高も約5,000万元から2兆元以上へと急増した(第1-1-29図)。
このような状況に対し、証券監督管理委員会は6月12日、株式市場のリスク抑制に向け、証券会社が提供する信用融資残高の上限を資本金の4倍に規制する案を公表した(15年11月現在も未実施)。14年末の証券各社の資本金をベースにすると、信用融資残高の上限は2兆7,000億元程度となり、規制案の公表時点で融資残高が2兆2,000億元を超えていたことから、信用取引を伴った投資家の新規参入による株価上昇のメカニズムが働かなくなることを懸念した投資家による利益確定の売却が進んだとみられ、株価は6月11日をピークに調整局面を迎えた。株価の下落により信用取引の強制決済(損切り)が連鎖的に発生したとみられ、信用融資残高は急減した。
(人民元の国際化と資本取引の自由化)
中国は世界金融危機以降、人民元の国際化を進める方針を採っている。具体的には、貿易決済における元の地位向上、IMFにおけるSDR構成通貨入りに向けた働きかけ、通貨スワップの締結等を進めている。
人民元は09年7月から貿易決済通貨としての規制緩和が進められ、人民元の国外への持ち出しが可能となった。人民元建て貿易決済額は年々増加し、10年の7,995億元から14年には6兆5,600億元となり、同年の中国の貿易総額の24.8%を占めるに至った。
金融機関間の国際的な決済に関するネットワークであるSWIFTによると、貿易等の決済に使われた通貨における人民元のシェアは14年1月には1.39%と7位であったが、15年8月には2.79%となり、円を抜いて世界4位となった。人民元を決済に使用する金融機関数のシェアは、13年8月には世界全体の31%であったが、15年8月には36%まで上昇した6。
一般的に国際的通貨としての地位を確立するためには、SDRの構成要件に示されるとおり、国際取引上の支払を行うために広範に使用され、かつ主要な為替市場で広範に取引されていることが必要と考えられる。一方で中国では、貿易・直接投資での元の使用は自由化されているものの、証券投資は認可制を採っており、資本取引の自由化は完了していない(第1-1-30表)。中国は96年12月に国際収支を理由に為替取引制限を行うことのできないIMF8条国に移行し、経常項目(貿易、対外・対内投資)における人民元と外国通貨の兌換が可能となった。02年11月には適格海外機関投資家(QFII:Qualified Foreign Institutional Investors)制度が導入され、中国政府が認定する海外の機関投資家が中国本土における証券を売買することが可能となった。06年には逆に国内の適格機関投資家(QDII:Qualified Domestic Institutional Investor)制度が導入され、認可された国内投資家(機関投資家及び個人)が海外の証券投資を行うことが可能となった。また、2011年には元建て適格海外機関投資家(RQFII)が発足し、外国人が保有する人民元を中国本土の証券に投資することが可能となった。
14年11月には、上海市場と香港市場の相互取引が開始された。これによって、外国人投資家は個人投資家も含めて、香港市場経由で上海市場の売買が可能となった(第1-1-31図)。
以上のように、人民元建ての対内/対外の直接投資及び証券投資は制度上可能とはなっているが、完全自由化にはまだ道半ばである。
また、09年ごろから人民元をIMFにおけるSDRの構成通貨に採用するよう働き掛ける動きが出ていた。09年3月に中国人民銀行の周小川総裁は「SDRを構成するバスケットを全ての主要国の通貨が含まれるように拡大すべきである」と主張する論文を発表した。SDR構成通貨の見直しは5年ごとに行われおり、その構成要件には「過去5年間の物品・サービス輸出額が最も多い加盟国・地域の発行通貨であること」、「自由利用可能通貨であること」の2つが挙げられている。2010年の見直しでは、人民元は前者の要件を満たしていたものの、後者は満たしていなかったとして、SDRへの採用は見送られた。その後も中国は人民元のSDR構成通貨への採用に向けて努力を続け、IMFは15年11月30日に人民元のSDR構成通貨入りを決定した。実際に人民元がSDRの構成通貨入りするのは16年10月からとなっている7。SDRへの採用は人民元の国際化の象徴的な意味を持つことになるが、国際的な通貨として責任が高まることを契機に、中国が取り組んできた金融・資本市場改革が今後一層強化されることが期待される。
さらに、中国はアジアやヨーロッパ諸国等との通貨スワップ協定の締結を進めるなど、人民元の利用を促進している(第1-1-32表)。スワップ協定を締結した国の輸出の対中依存度にはばらつきがみられ、経済関係の強さ以外の要因も勘案しスワップ協定が結ばれていることが示唆される。
(3)中国及び各国の政策対応
中国経済が減速する中、中国及び中国減速の影響を受けている国や地域では各種の政策対応が採られている。
(中国の政策対応)
中国の公的債務残高のGDP比は41.1%程度と高くはないものの(後掲第1-1-38図)、財政出動で景気を下支えし構造改革を先送りすれば、一層の過剰設備や過剰債務を抱えることになる可能性が高いことから、過去のように超大型の景気対策は発動しづらい状況になっている。李克強国務院総理は15年9月のサマーダボスフォーラムにおいて、「国内において長年累積した多層的矛盾が徐々に顕れている」、「必要かつ限定的で、時機に合った、精密な調整・コントロール措置を採っているところ」と発言している。
このような中、15年6月以降の株価急落を受けて、中国政府は矢継ぎ早に株価対策を打ち出した(第1-1-33表)。
また、15年9月には財政支援策が公表された。内容は既存の政策や方針を確認し、具体化を促すものが中心であり、新たな財政措置は限定的であった。
更に同月13日、「国有企業改革の深化に関する指導意見」も打ち出され、2020年までに民間投資を呼び込むために国有企業と民間企業の混合所有制を発展させていくことなどが盛り込まれた(第1-1-34表)。また同月24日に発表された「国有企業の混合所有制経済発展に関する意見」では外国資本も順次混合所有制に参加していくことが盛り込まれた。しかし、11月に公表された第13次5か年計画の草案における国有企業改革に関する言及は限定的であり、国有企業改革の優先度については疑問が残る。
一方、金融政策をみると、14年11月以降6回にわたって利下げが行われており、預金準備率の引下げとあいまって、大規模な金融緩和措置が打ち出されている(第1-1-35図)。利下げが可能となっている要因としては、消費者物価が15年4~6月期には前年同期比1.4%、7~9月期には同1.7%と、低水準で安定していることが挙げられる。ただし、後述するとおり、過剰生産能力の調整から生産者物価指数の下落が続いており、企業の実質金利が高止まりしているため、利下げの効果が発揮されにくい状況になっている面がある。
以上のように、15年10月現在までに打ち出された政策は、大規模な財政出動を伴っていないことが特徴となっている。
(各国の政策対応)
中国の景気減速による外需の落ち込み等の影響を受けた各国でも政策対応が取られている。オーストラリアや韓国では金融緩和が行われている(第1-1-36図)。ベトナムでは、人民元の切下げによる同国経済への影響を考慮し、15年8月に通貨を切り下げた。一方、ブラジルでは、景気は悪化しているものの、高インフレへの対応のために政策金利は高止まりしている。次章で分析するとおり、アメリカでは15年中の利上げ開始が見込まれていることから、新興国では今後、景気下支えと資金流出・通貨下落の防止の両にらみで金融政策を運営しなければならないという困難に直面することになる。
また、アジア諸国では財政政策による景気下支えも行われている(第1-1-37表)。ほとんどの対策が8、9月に決定されており、各国政府が景気減速に対して迅速に対応している様子がうかがえる。なお、アジア諸国における財政状況を比較すると、政策余地には国によってばらつきがみられる(第1-1-38図)。