まえがき

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「世界経済の潮流」は、内閣府が年に2回公表する世界経済に関する報告書です。

現在、世界経済は、中国や一部の新興国で弱さがみられるものの、アメリカが回復する中で緩やかに回復しておりますが、本報告書の第1章では、緩やかな回復にとどまっている背景及び先行きのリスクについて分析しています。緩やかな回復にとどまっている要因としては、(1)アメリカ、中国の輸入の伸び、(2)先進国の賃金の伸び、(3)物価の上昇テンポのそれぞれが過去の世界経済の景気回復局面と比べて緩やかにとどまっていることを指摘しています。また、先行きのリスクとしては、(1)アメリカの金融政策の正常化のプロセスの中での国際金融市場の大きな変動、(2)ヨーロッパ経済の不透明性の高まり、(3)中国における不動産市場の調整が進まなかった場合のハードランディング懸念、(4)原油価格が下落する中、輸出や財政において原油依存度の高い産油国等の成長力低下やそれに伴う国際金融市場の不安定化を挙げています。

また、後半部分では、アメリカ経済の現状と構造変化について「雇用の質」と「経済の強さ」に焦点を当てて分析しています。

ヨーロッパ経済については、まず国ごとの回復のばらつきの現状を輸出競争力の観点から分析した上で、先行きに関する不透明感の高まりの背景について検証しています。

中国経済については、過剰設備や過剰信用の解消という構造改革を推進し、成長の質を重視する「新常態(ニューノーマル)」と呼ばれる経済の新局面に向けた政策転換が行われている要因について分析しています。

我が国の経済財政政策を適切に運営するためには、その前提となる世界経済の現状や先行きのリスク等についての的確な把握が極めて重要です。本報告書がその理解を深める一助となれば幸いです。

平成27年1月

内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)

田和 宏

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