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まえがき

 「世界経済の潮流」は、内閣府が年2回公表する世界経済に関する報告書です。

世界経済は、リーマンショックを契機とした世界金融危機とその後の深刻な景気後退を様々な努力で乗り越え、回復を続けてきました。しかし、2011年に入ってから、欧米経済が減速するなど全体として回復力が弱まっています。加えて、ギリシャに端を発した欧州の政府債務危機により、金融資本市場の緊張が高まっており、予断を許さない状況にあります。他方、こうした世界経済の回復力の弱まりと下振れリスクの高まりに対して、財政・金融政策ともに政策変更の余地が狭まっており、各国とも政策運営が難しくなっているのが現状です。

我が国が東日本大震災からの復興を成し遂げ、再生するためには、こうした世界経済の現状や先行きを的確に把握した上で、国家戦略の再設計・再強化を図っていくことが極めて重要です。今回の報告書は、そのためのバックグラウンドとなる分析を提供することを企図しています。

 第1章「減速する世界経済、狭まる政策余地」では、回復力が弱まっている世界経済の現状と、緊張が高まっている金融資本市場の動向について概観しています。また、財政再建が喫緊の課題となっている主要先進国では更なる財政出動が困難となっている一方、金融政策の面でも先進国、新興国ともに経済成長と物価とのバランスから政策変更の余地が狭まっていることを分析しています。これらを踏まえ、世界経済の先行きについても検討しています。

 第2章「各国・地域の動向」では、ヨーロッパ、アメリカ、アジアの景気の現状と課題について、構造的な問題も含めて掘り下げ、分析を行っています。また、先行きについて想定されるシナリオを提示するとともに、リスクを検討しています。

本報告書が、世界経済の現状や今後の展望についての理解を深め、東日本大震災を経験した我が国の新しいあり方を考える際の一助となれば幸いです。

平成23年12月

内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)

齋藤  潤

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