ヨーロッパでは景気は総じて持ち直している。ただし、10年7~9月期の実質経済成長率は、10年前半と比べると持ち直しのテンポは緩やかになっている。
また、国ごとにみると、ドイツでは成長率が高い伸びとなった一方、ギリシャでは8四半期連続で低下し、フランスやイタリアの成長率は低い伸びにとどまっている。輸出と生産の増加がけん引しているドイツと、輸出競争力が弱いことに加え、大規模な財政再建に取り組まなければならない南欧諸国の間では、ばらつきが大きい。
先行きについてみると、ヨーロッパ経済のけん引役であったドイツでは輸出と生産の伸びが鈍化しているものの、ヨーロッパ経済全体は基調として緩やかに持ち直していくと見込まれる。ただし、各国の財政緊縮による景気に対する下押しの影響に留意する必要がある。この結果、ユーロ圏における11年全体の実質経済成長率は、1%台半ばになると見込まれる。
内外需別にみると、外需は、輸出の増加が引き続きヨーロッパ地域の景気をけん引していくことが期待される。しかしながら、このところ国外向け製造業受注は伸びが鈍化していることから、これまでの輸出主導による景気の持ち直しの持続性については懸念が残る。
内需についてみると、ドイツでは、生産や輸出の増加が所得環境の好転を通じて既に個人消費に波及しており、景気の回復の自律性が高まっていることから、持ち直しが持続すると見込まれる。ただし、ヨーロッパ全体でみると、依然として失業率は高水準で推移しているなど景気の回復の自律性が乏しいことから、ドイツなど一部の国を除いて、雇用環境は厳しい状態が続くと見込まれる。このため、失業率は、10%近傍で高止まっていく状態が続くと見込まれる。
なお、国際機関等の実質経済成長率の見通しをみると、ドイツでは、フランスや英国の見通しと比べ高い伸びとなっており、引き続きドイツがヨーロッパの景気回復をけん引していくものと見込まれる(第3-2-1図、第3-2-2表)。
一方で、OECDの見通しによれば、ギリシャやポルトガルでは、11年の実質経済成長率はマイナスになることが見込まれており、ドイツとは対照的となっている。国ごとのばらつきが一層拡大することは、ヨーロッパ経済の安定的な成長への懸念となるおそれがある。