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第3章 世界経済の見通しとリスク

第1節 アメリカ経済の見通しとリスク

1.経済見通し(メインシナリオ)- 緩やかな回復が続く見通し

  アメリカでは、失業率が高止まるなど下押し要因は依然としてあるものの、政策効果もあり、景気は緩やかに回復している。GDPの約7割を占める個人消費が5四半期連続で増加したほか、民間設備投資も3四半期連続で増加するなど堅調に推移しており、景気回復の自律性が増しつつある。ただし、住宅投資は、10年4月の住宅減税の終了を受けて市場が再び停滞しており、大きく減少している。
  先行きについては、消費や設備投資の回復の自律性が増していくことから、徐々に成長率は高まっていくものと見込まれる。ただし、失業率の高止まりや信用収縮の継続、政策効果のはく落等により、内需の伸びが緩慢となることから、景気の回復テンポは過去の回復局面に比べ緩やかになると考えられる。この結果、11年全体の実質経済成長率は、2%台前半となる可能性が高い。なお、失業率は、今後緩やかに低下していくことが予想されるものの、11年は9%前後、12年は8%前後とアメリカの構造的失業率(5~6%)を大きく上回る依然として高い水準で推移する見通しである。
第3-1-1図
  以下、個別の需要項目について概観する。

(i)個人消費
  失業率の高止まりや信用収縮、家計のバランスシート調整の継続が見込まれるものの、景気の緩やかな回復に伴う資産価格の上昇や雇用環境の改善が期待されることから、引き続き緩やかな回復が続くと見込まれる。なお、10年末に失効するブッシュ減税の継続を前提としている。

(ii)住宅投資
  住宅取得環境は良好であることから、住宅投資の持ち直しが期待されるものの、住宅市場は過剰在庫を抱え、また住宅価格は不安定な状況が続く見通しであることなどから、今後数年間は市場の調整が続く可能性が高い。このため、住宅投資の回復のテンポは過去に比べて極めて緩慢なものにとどまると考えられる。なお、住宅投資のGDPに占める割合は、サブプライム住宅ローン問題が発生する以前の2000年代前半における5~6%から、09年には2.7%となっており、経済成長に対する寄与度は低下している。

(iii)設備投資
  内外の需要の緩やかな回復とともに幅広い産業で生産の増加が見込まれることから、設備投資は引き続きプラス成長を維持するものと見込まれる。ただし、信用収縮、とりわけ中小金融機関の経営悪化により中小企業の資金調達が困難な状況が続くほか、商業用不動産市場の停滞により構築物投資の伸びは軟調となることが予想されることから、投資全体の伸びは緩慢なものにとどまると見込まれる。

(iv)政府支出
  10年10~12月期以降、財政刺激策の大幅な縮小が見込まれている。また、州・地方財政の悪化が続いており、広範な地域で歳出削減が行われている。オバマ政権はインフラ投資を中心とする追加財政刺激策を検討しているものの、歳出拡大を伴う措置については連邦議会との調整が難航することが予想されることから、政府支出は低調に推移する可能性が高い。

(v)外需
  世界経済及び国内経済の緩やかな回復に伴い、輸出及び輸入は増加し、伸びを高めていくと見込まれる。


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