世界経済の回復ペースが緩慢となる中、為替政策に加え、財政、金融面ともに国際的な政策協調の重要性が一層増している。
最近の具体的な動きとしては、10年11月に開催されたG20ソウル・サミットでは、協調の継続の重要性について改めて確認され、首脳宣言において、「非協調的な政策を採ることは、すべての国にとって悪い結果を導くのみである」と言及されている。また、G20として包括的、協力的かつ国ごとの政策行動からなる「ソウル・アクションプラン」が発表され、通貨面については、「通貨の競争的な切下げを回避」することや「自国通貨が準備通貨となっている国々を含む先進国は、為替レートの過度な変動や無秩序な動きを監視」することなどが盛り込まれた。
また、G20では、「強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組み」を立ち上げ、国レベルでの相互評価プロセス(MAP:Mutual Assessment Process)を実施しているが、さらに、過度な経常収支の不均衡も含めたマクロ経済の不均衡を是正するための監視の仕組みの確立に向けた動きがみられる(第1-1-11図)。ソウル・サミットにおいては、MAPを強化し、継続した大規模な不均衡を判定する上での様々な指標から構成される複数の参考となるガイドラインを設け、同ガイドラインに基づいて評価を行うことが合意された。EUでも、10年10月に行われたEU首脳会議において、新しいマクロ経済サーベイランス(経済監視枠組み)の創設が決定された。このように、マクロ経済の不均衡の是正のためには、マクロ経済政策協調、各国における構造改革への取組が不可欠であることが共通認識となってきている。
このほかにも、財政面においては、先進国の同時財政緊縮による世界経済の下振れ回避、金融面においては、先進国の金融緩和を背景とした新興国のバブル懸念への対応等、課題が山積しており、各国の更なる協調が求められる。