第3章 世界経済の見通しとリスク |
第1節 アメリカ経済の見通しとリスク
1.経済見通し(メインシナリオ)― 基調としては緩やかな回復に向かう見通し
アメリカでは失業率が10%を超えて上昇するなど、引き続き深刻な状況にあるが、政策効果もあり、景気は下げ止まっている。特に、消費や住宅市場、生産で持ち直しの動きがみられる。
先行きについては、09年10〜12月期の実質GDP成長率はプラスを維持し、その後も、8月に終了した自動車買換え支援策の反動はあるものの、基調としては緩やかに回復に向かうと見込まれる。09年秋からの公共投資の本格化や、08年3月からの所得税減税の継続、住宅減税の09年4月末までの延長等の景気刺激策の効果もあり、内需が持ち直すとともに、在庫調整の進展による生産の持ち直しの動きが広がるものと見込まれる。
ただし、GDPの7割を占める個人消費は、家計のバランスシート調整や信用収縮の継続、失業率の上昇による所得環境の悪化等により、伸びが緩慢になると見込まれる。このため、景気の回復テンポは10年に入っても緩やかとなり、10年全体の実質GDP成長率は1%台となる可能性が高い。この結果、10年末時点では、実質GDPの水準は、金融・経済危機前の水準までは戻らない可能性もある。なお、失業率は10年中に、戦後のピーク(82年11月及び12月:10.8%)に近い水準まで上昇すると見込まれる(第3-1-1図)。
以下、個別の需要項目について概観する。
(i)個人消費
09年10〜12月期は前期の反動減が予想されるものの、10年以降はプラス成長を維持し回復に向かうと見込まれる。ただし、所得環境の悪化や信用収縮の影響、家計のバランスシート調整の継続等を背景に、過去の景気回復局面と比較して回復のテンポは緩やかになる可能性が高い。また、10年10月には減税措置による下支え効果もはく落することから、10年全体では1%程度の緩やかな伸びにとどまると見込まれる。
(ii)住宅投資
住宅金融市場の安定化や景気刺激策による減税措置等により住宅取得環境の改善が進んでいることから、住宅需要の回復が見込まれる。このため、10年も住宅着工及び住宅投資は持ち直しの動きが続くと考えられる。ただし、差押え物件の中古市場への流入が継続していることや、10年3月末には住宅ローン金利低下に寄与してきたMBS買取措置が終了するとともに、10年4月末には減税措置も終了することから、回復のテンポは緩慢なものにとどまると考えられる。
(iii)設備投資
内外の需要の回復を受けて生産に持ち直しの動きが広がっていることから、設備投資は10年中にプラス成長に転じると見込まれる。ただし、信用収縮の影響や需要の回復テンポが緩やかになると見込まれることから、その伸びは緩慢なものにとどまると考えられる。
(iv)外需
10年以降は、内需の緩やかな回復に伴って輸入が拡大するとともに、世界経済の回復に伴う外需の回復により輸出が拡大することが見込まれる。GDPに対する寄与度では、アメリカ経済が回復のペースを高めるにつれて、輸入の伸びが輸出の伸びを上回ると予想されることから、徐々にマイナスの寄与を高めていくと考えられる。