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まえがき

 「世界経済の潮流」は2002年春に創刊され、年2回公表しております。第10号にあたる本書は2部から構成され、第I部では、先進各国の財政政策動向と、高成長が続く中国経済の現状と展望について分析を行いました。第II部では、2007年の世界経済の見通しについて分析を行っています。
 第 I 部第1章「先進各国の財政政策の動向」では、90年代以降先進各国で、中期的な予算管理の手法を含めいろいろな財政ルールが具体的に規定されたこともあって、財政健全化の大きな進展があったことなどを概観しています。各国の経験は極めて多様ですが、傾向としては、財政健全化の効果が持続した国では、歳入増よりも歳出削減に重きをおいた取組を進めていることなどを示しております。景気循環との関係では、財政による自動安定化機能がかなりの程度の景気の下支え効果を持つことを示しています。財政の自動安定化機能を発揮するためには、財政健全化を進める上でも配慮が必要と考えます。また、経済を活性化するための税制改革等が進められていることも紹介しております。
 第2章の「高成長が続く中国経済の現状と展望」では、投資と輸出という視点を中心に中国経済の現状や将来の展望について検討しています。旺盛な投資と輸出の拡大は、近年の経済成長をけん引する一方で、過剰投資や貿易黒字の急拡大といった不均衡も生み出しています。こうした不均衡への対処について、過剰投資の解消、過剰流動性への対処、過剰貯蓄の解消の三つの側面から政府の取組や課題を整理しています。これらの問題は、産業高度化、金融システムの安定等の構造的な課題ともつながるものであり、現状の不均衡への対処にとどまらず、着実に改革を進めることで、将来の持続的な成長につなげていくことが期待されます。
 第 II 部では「世界経済の見通し」として世界経済の展望を扱っています。2007年の世界経済は引き続き回復が続くものの、アメリカ経済やユーロ圏経済の緩やかな成長等により、06年をやや下回る成長になることが見込まれます。こうした中心シナリオに対する先行きリスクとしては、(i)アメリカ経済の急減速、(ii)原油価格の再高騰、(iii)為替レートの急速な調整と長期金利の上昇が挙げられます。
 本書が、先進国の財政政策の動向や中国経済の現状と展望、さらには世界経済の展望について理解を深める一助となれば幸いです。

 平成18年11月

内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)

高橋 進


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