第 I 部 第2章のポイント
1.低金利政策等により多くの先進国で起きた住宅ブーム ●1990年代後半以降、アメリカ、英国を始めとした幾つかの先進国で住宅価格は上昇傾向にあったが、2000年のITバブルの崩壊後の低金利政策等を受けて上昇率が加速した。 2.アメリカ、英国の住宅価格上昇による資産効果を通じた消費拡大効果 ●住宅価格の上昇は、住宅投資に加え資産効果を通じて消費を拡大させる効果があり、特にアメリカや英国では、ITバブル崩壊後の景気を下支えする役割を果たしてきた。 3.低インフレ下では資産価格変動と金融政策の関係が一層複雑に ●ITバブル崩壊後、アメリカ経済が比較的早く回復した背景には、大規模な減税に加え、大幅な金融緩和策による住宅価格の上昇を通じた資産効果の景気下支えがあった。このような資産効果を通ずる政策を活かし、経済のレジリアンス(柔軟性)を高め景気の安定化を図る方策として、モーゲージ市場をアメリカや英国並みに整備し、金融政策の有効性を高めようという考え方が国際機関等で議論されている。 |
第 I 部 海外経済の動向・政策分析 |
第2章 住宅価格の上昇と消費拡大の効果 ―アメリカ、英国を中心に―
1990年代後半以降、アメリカ、英国を始めとした幾つかの先進国において住宅価格上昇が続き、いわゆる「住宅ブーム」と呼ばれる現象が起こっている(第2-1-1図)。また、ITバブル崩壊後のアメリカ経済において、堅調な消費拡大を続けることができたメカニズムとして、住宅価格上昇が資産効果(1)を通じて消費に与える効果があったことが着目されている。
本章では、まず、第1節で、こうした住宅ブームの現状とその背景について分析した後、第2節で、特に住宅価格の上昇に2004年以降加速のみられているアメリカ、及びブームがほぼ終息したとみられる英国における消費拡大効果についてみる。最後に、第3節で、住宅ブームに際して行われた、低インフレ期の金融政策の在り方に関する議論について、論点整理を行う。