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11 フィリピン     Republic of the Philippines
<2003年>

フィリピン経済のこれまで

<2004年の経済>
 2004年の経済成長率は、5%程度となる見込みである(政府見通し4.9〜5.8%、民間機関9社の平均5.4%(2004年10月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2004年4月時点4.4%)に比べ、上方修正されている。2004年前半は、物価の安定や国外の出稼ぎ労働者からの送金額の増加、選挙関連の支出増等から消費が堅調に増加し、またアメリカを中心とした海外経済の回復に伴い輸出が増加した。このような背景からGDP成長率は、1〜3月期前年同期比6.5%、4〜6月期同6.2%となり、高い成長が続いた。また、生産面からみると、灌漑設備の改善等から農林水産部門の生産が2003年後半からの好調さを維持し、増加した。サービス業についても運輸・通信・倉庫業が中心となって成長拡大に寄与した。年後半については、石油価格の高騰、公共料金・交通運賃の値上げ等を受けて消費がやや低迷するおそれがあることから、成長率はこれまでに比べるとやや鈍化するものと見込まれる。

フィリピンの主要経済指標

<2005年の経済見通し>
 2005年の経済成長率は、4〜5%程度となる見込みである(政府見通し5.3〜6.3%、民間機関9社の平均4.3%(2004年10月時点))。
 成長を支える要因としては、農林水産部門が2004年に引き続き好調さを維持することが挙げられる。
 下方リスクとしては、アメリカの利上げを受けて政策金利の引上げが懸念されることや原油価格の高騰による物価上昇等が個人消費へ与える悪影響や、アメリカ、中国等主要国の成長率の低下による輸出の低迷等が懸念される。

<財政金融政策の動向>
 財政は97年度まで黒字を維持していたが、アジア通貨危機後税収が減少し、98年度以降赤字が続いている。2003年度については、政府は税収管理強化のため組織改革を実施するなど、財政改革を続け、その結果財政赤字額は1,999億ペソ(GDP比4.6%)と、政府の目標額である2,020億ペソ(GDP比4.7%)を下回り、大幅に改善した。これは、歳出が前年度比6.2%増に対し、徴税能力強化策による税収増等から歳入が同10.5%増となったためである。しかし、2004年1〜6月期の財政赤字は、総選挙による支出拡大や税収の伸び悩み等により、目標である796億ペソ(GDP比3.5%)をやや上回る801億ペソ(GDP比3.6%)となった。政府は2004年度の財政赤字目標額を1,978億ペソ(GDP比4.2%)としていることから、目標達成に向けて脱税摘発等徴税に努める考えを示している。また、8月に議会に提出された2005年度予算案で財政赤字目標額を1,845億ペソ(GDP比3.6%)とし、現在の徴税システムの強化や新しい税制の実施による追加歳入の確保等さらなる財政赤字削減に向けての方針を示している。政府は2009年度までに財政収支の均衡を図る中期的な計画を進めている。
 金融政策については、政策金利である翌日物借入金利及び貸出金利は、2002年3月以降それぞれ7.0%、9.25%であったが、2003年7月にともに0.25%引き下げられ6.75%、9.00%となり、92年以来11年ぶりの低水準のまま据え置かれている。


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