第2章のポイント ●先進国が成熟期に入り安定的な成長を続けるなか、中国やインドのここ数年の高成長が注目を浴びている。●現在61億人の世界の人口は、2030年には81億人となる見通しであるが、その増加のほとんどはアジアやアフリカにおける人口増によるものである。ただし、これら諸国においても出生率は徐々に低下し、また、高齢化も進展することが見込まれる。 ●これらの人口動向を踏まえた各国の成長率について、仮定の下で試算を行うと、先進国と比べ、アジアの各国の成長率は高いものとなる。また、国際機関の推計では世界のGDPに占めるシェアも大幅に増加することになる。ただし、一人当たりGDPの格差は、縮小はするものの経済規模ほどには縮小しないことになる。 ●世界の貿易については、過去約20年間の間にGDPを上回って成長しているが、2020年には、非OECD諸国が関係する貿易額が世界の貿易額の7割を占めることになると見込まれている。 ●他方、こうした世界の経済成長にとって、制約要因となり得るのがエネルギーと食糧の問題である。両者共に、今後も需要の伸びに対応して供給が増えることが見込まれているが、エネルギーにおいては供給が中東諸国に一層集中することや需要増大に比例したCO2排出量増大が、食糧においては気候変動や地域ごとの需給バランスの安定化等が課題となる。 ●東アジアは80年代後半以降、急速に世界貿易におけるシェアを拡大させている。その内訳をみると、とりわけ域内における貿易比率の上昇が著しく、80年初頭にはわずか2割弱であったのが2003年には約4割を占めるまでになっている。 ●90年代に入って東アジア諸国の貿易依存度が急上昇した背景には、90年代特に急増した直接投資により、従来型の輸入代替型工業化ではなく、輸出指向型工業化が可能となり、製造業を中心とした垂直的な産業内貿易へと構造転換が進んだことがある。 ●資本移動のグローバル化、通信技術の発達を背景にしたIT化の進展等により、域内での生産拠点の国境を越えた細分化された生産プロセスの分業体制を敷くことが可能となったことや、域内にいくつもの産業集積が形成され、いわゆる規模の経済性を享受できたことから、この地域独自の生産ネットワークが構築されている。 ●地理的な距離が近く、貿易にかかるコストが低いほど垂直的産業内貿易が活発化すると考えられることから、域内のより多くの国と、貿易のみならず広範な分野で連携することは各国経済により高い成長をもたらす可能性がある。 ●中長期的な展望としてはWTOの理念はあくまで尊重されなくてはならないが、経済発展段階の差異や、多数の国の間で合意を得るにあたって必要とされる政治的、時間的コストを考慮すると昨今アジア域内でFTAやEPA締結の動きが活発化していることは理にかなっているといえよう。ただし、貿易の世界規模での完全自由化を視野に入れ、安易な地域主義に陥ることのないよう留意すべきである。 |
2章 世界経済の長期展望 |