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まえがき


 「世界経済の潮流」は2002年春に創刊し、以後、年2回公表しております。第6号にあたる本書は3章から構成されています。
 第1章では、競争力の源泉としての「クラスター」について分析をしています。急速なグローバル化、IT化の進展により、一層厳しさが増す国際競争に勝ち残るためには、国レベル、産業レベル、企業レベル各々において戦略的に競争力の強化を図っていく必要があります。特にミクロレベルで競争力の主体である企業が、優位性を保持するためには、イノベーションの創出が鍵となってきますが、それを促進する産業集積機能として注目されているのが「クラスター」です。クラスターとは、従来からある産業集積のような単なる企業の集中的な立地を指すものではなく、企業、大学、研究機関等の集合体が多層的で有機的なネットワークを形成し、「競争と協調」の中で地域の競争力を高めていく仕組みです。本書では海外におけるクラスター形成の事例を紹介し、その成功の要因を探るとともに、クラスター形成に当たっての望ましい政策支援の在り方について考察いたしました。
 第2章では、世界経済の長期展望について取り上げています。
 第1節においては、国連による人口推計を踏まえ、一定の仮定に基づき、各国の成長率を試算し、経済成長率及び一人当たりGDPの比較を行っており、また、貿易動向等についても長期的な姿を展望しています。さらに、成長の制約要因として、エネルギーや食糧の問題があることを指摘しています。
 第2節では、アジア地域が将来にわたってさらなる発展を遂げるために必要な制度的な対応について検討しています。最終的にはWTO体制の実現を目指すものの、当面は、FTA等の地域経済連携の強化に努め、WTO理念との整合性を保ちつつ、アジア地域全体の経済連携を目指すことが重要であるとしています。
 第3章では、2005年の見通しを中心に世界経済の展望を行っています。さらに、資料として国・地域別の経済見通しを掲載しています。
 我が国が競争力を強化していく上での源泉となるクラスターや、世界経済の長期、短期の展望について理解を深めていく上で本書が一助となれば幸いです。

 平成16年11月

内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)

大田 弘子


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