<2002年の経済>
2002年の経済成長率は、1%程度と見込まれる。年前半の成長率は、年率1%台半ばのプラス成長となり、93年以来のマイナス成長となった2001年10〜12月期(前期比年率▲1.1%)から回復した。しかしながら、個人消費は弱含み基調にあり、生産は緩やかに回復しているものの、固定投資は減少が続いている。2001年秋を底に改善を示してきたヨーロッパの製造業及び消費者の信頼感指数は、ユーロ高や株安等の影響から2002年半ばにかけて足踏み状態にある。
欧州委員会は、2002年7〜9月期、10〜12月期の各成長率を前期比0.3〜0.6%(前期比年率では1.0〜2.6%程度)と予測しており、年間の成長率は当初予測の1.4%から1%程度へと下方修正している。民間機関の見通しも春時点から下方修正されている(1.2%→0.9%)。
ユーロ圏の失業率は、2001年を底に以後やや高まりを示している。物価は、総合消費者物価指数(HICP)上昇率が目標値の前年比2%程度へと低下してきており、安定基調にある。
<2003年の経済見通し>
2003年は2%程度の成長が見込まれる。成長を支える要因としては、輸出の回復に応じて投資が緩やかに改善するとみられること、物価の下落により実質可処分所得が増加することで消費の伸びも低いながら期待されることなどが挙げられる。
下方リスクとしては、株安や、通信企業を始めとする域内大企業の収益悪化がコンフィデンスを低下させ、投資、消費を抑制する可能性がある。
<金融政策の動向>
欧州中央銀行(ECB)は、世界経済の減速を受けて2001年5月以降11月までに4度にわたり利下げを行い(合計1.5%ポイント)、政策金利を3.25%とした。その後2002年に入ってからも政策金利は据え置かれた状態が続いているが、世界経済の回復が緩やかとなる中、特にヨーロッパ主要国の景気が弱いこと、ユーロ圏の物価上昇率が目標である前年比2%程度へと下落してきていることなどからもう一段の利下げを求める動きもみられる。
物価は今後も2%程度でおおむね安定して推移するとみられることから、こうした物価の状況は、ECBが金融緩和スタンスを維持することを可能にするものとみられる。