第2章 (3)電気機械

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これまでは日本の国際的な強みである製品を含む産業を中心に見てきたが、ここでは、2000年前後から競争力を低下させてきた、電気機械についてみていく。

1.概況

(電気機械の出荷は2022年時点でピーク時の3分の2程度、東海を除く全国的に減少)

電気機械製造業出荷額の長期推移をみていくと、1990年代にピークをつけた後、2002年にかけて減少した。その後は国内外の景気の回復に応じて、出荷額も緩やかに回復していたが、2008年から2009年に再び減少、2010年代はおおむね横ばいとなっている。2021年以降は再び増加傾向にあるものの、2022年時点で39.7兆円と2010年時点(39.9兆円)にも届いておらず、ピーク時の1997年(60.4兆円)と比べると3分の2程度となっている(図表2-24(1))。

全国の伸び率に対する各地域の寄与度をみると、1985年比では東北、東海、北陸、中国、九州などでプラスとなっているものの、2000年比では、東海と数十億円オーダーの出荷額である沖縄の2地域のみがプラスとなるなど、全国的に減少している。特に南関東の減少は大きく、2000年比の3分の1程度にまで落ちて寄与度でも▲15.4%ポイントとなっている他、近畿も2000年比で3分の2程度、寄与度で▲5.8%ポイントとなっている(図表2-24(2))。

(比較的出荷額の伸びた地域が比較優位で上位に来るも、2000年以前は減少した地域も)

前節までと同様、電気機械製造業についても比較優位をみていく。

労働生産性についてみると、東北、東海、北陸、中国、九州など、1985年比で出荷額の伸びている地域の都道府県が上位にきており、出荷額の伸び(あるいは減少の少なさ)とおおむね一致している点は、前節までと大差はない。(図表2-25(1))。TFPについてみても、おおむね似た地域が上位にきており、相対的に比較優位のある地域が出荷額を伸ばした、あるいは出荷額の減少幅を抑えたといえる(図表2-25(2))。

その上で、前節までと比べたときに、近畿など、出荷額が伸びていない地域も、特に2000年以前に複数府県が上位にきている。前章でみたように国際的な比較優位が薄れる中で、国内で特化していた地域が産業の国際競争力の低下とともに、その出荷を減らしていった可能性が示唆される。

2.大阪府の民生用電気機械器具

本項では、出荷額が大きく減少している電気機械製造品の中でも、1995年時点で出荷額シェアの1割以上を占めていたものの、その後大きく出荷額を減少させた民生用電気機械器具について、1995年時点で出荷額シェアのトップ(17%)であった大阪府を取り上げてみていきたい。

(大阪府の民生用電気機械器具は、2001~2002年、2020年に大きく出荷額が減少)

大阪府の民生用電気機械器具17(小分類)の出荷額を長期的にみていくと、長期的に減少傾向だが、特に、2001年から2002年、2020年に大きく減少させている(図表2-26)。2001年から2002年にかけての減少は、統計の変更による影響も多少はあると考えられるが、前章でもみたように、1990年代から2000年代にかけて、東アジア各国で家電製品の競争力が増していく中で日本の比較優位が薄れ、その影響で工場閉鎖が相次いだ18影響が出ていると考えられる。

(就業者数は30年で半減する中、同期間の給与水準の減少は限定的)

続いて、大阪府の電気機械の就業者数推移も確認すると、1990年以降、継続的に減少し続け、2020年には6.1万人と、30年前の1990年と比較して半分以下となっている(図表2-27)。前述の工場閉鎖の影響もあり、出荷額が断続的に減少する中、大阪府における民生用電気機械器具製造業の雇用規模が減少し続けてきたことが分かる。

また、同時期の給与についてもみると、2004年までは緩やかに上昇した後、横ばいで推移している(図表2-28)。2004年と2009年で統計上の断絶がある点も加味すれば、出荷額の減少ほどには給与は減少しておらず、工場閉鎖とともに、雇用が減少していく中にあっても、従業員1人当たりの給与水準は一定程度確保されていることが示唆される。


17 冷蔵庫やエアコン、洗濯機など、いわゆる白物家電を中心とした分類。
18 2001年9月に大手家電メーカーA社が大阪府の冷蔵庫生産拠点を閉鎖し別の国内拠点に統合、2019年9月に大手家電メーカーB社が大阪府の冷蔵庫生産拠点の工場を閉鎖している。
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