第1章 (1)三大都市圏における社会増減
本節では、国内の各地域から東京圏、名古屋圏1、大阪圏2への人口移動がどのように進んでいるのかについて、状況を確認する。
1.三大都市圏への人口流入
(東京圏への一極集中は、コロナ禍で一時的に減速したものの、足下で再び加速)
地域人口の増減のうち、転入数と転出数の差による社会増減について、近年の状況を確認すると、東京圏(南関東(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県))で大幅な転入超となっており、東京圏に集中している(図表1-1)。
2017~19年は、年平均で14万人弱の転入超であったが、コロナ禍の2020~22年は年平均9万人程度の転入超にとどまった。この背景としては、感染症拡大に伴い、より感染リスクが高いとみられていた東京圏への住居の移動が控えられたことなどの指摘がある3。しかし、感染症が収束し、経済社会活動の正常化が進んだ2023年には、再び東京圏への転入超過幅が拡大し、12万人を超える水準となっている。
さらに、直近の2024年における人口移動について、東京都4の転入超過数を月次データにより確認する。
2024年10月までの年間累計転入超過数は、男性で37,238人と、前年同月を3,500人ほど上回るペースとなっている一方、女性では41,795人と、前年同月を3,600人ほど下回るペースとなっており、全体としては、2023年と同程度の転入超過数となることが見込まれる(図表1-2)。
(コロナ禍以降も、東京圏には全地域から人口が流入)
次に、三大都市圏への人口流入について、転出元別の状況を確認したい。
東京圏では、すべての地域から転入が転出を上回る純流入(社会増)の状況が続いており、特に東北、東海、近畿、九州からの純流入が多い(図表1-3)。コロナ禍にあった2020年と2021年の2年間の純流入幅は縮小したが、2022年以降は再び、全地域からの純流入が拡大している。
(名古屋圏と大阪圏からも東京圏への流出が続く)
名古屋圏においても、東京圏(南関東)への人口純流出は多く、それによって全体でも大幅な転出超が続いている(図表1-4)。東京圏への転出超幅は、コロナ禍下の2020~22年にかけても、コロナ禍前の2018年とほぼ同水準か、それを上回る大きさとなっており、2023年には更に拡大している。また、2019年以降は近畿への純流出も続いている。
大阪圏においても、名古屋圏と同様、東京圏への大幅な転出超が続いている(図表1-5)。しかし、それ以外の地域からは、おおむね転入超となっており、2023年には転出と転入がほぼ均衡した状況となっている。
以上のように、全体として転入超が続いているのは東京圏のみであり、三大都市圏の中においても、東京圏への一極集中の状況にある。一方で、大阪圏と名古屋圏の状況を比較すると、大阪圏での転出超幅は縮小しつつあるのに対し、名古屋圏では全体として転出超幅が拡大し、人口の吸引力が低下しつつある。
(全国の生産年齢人口に占める東京圏の割合は増加の一途)
こうした東京圏への人口集中は、労働力に地域的な偏りを生じさせることになる。生産年齢人口(15~64歳)に占める東京圏の割合の推移をみると、2000年の約28%から2023年の約32%へと、4%ポイント程度増加していることがわかる(図表1-6)。
2.男女別の三大都市圏への流入
三大都市圏における人口の転出入の状況について、男女別にそれぞれの転出と転入の水準を確認する。
(三大都市圏のいずれにおいても、転出・転入者の割合は男性が高く、純流入割合は女性が高い)
転出入者数の当該都市圏人口に対する割合をみると、2023年は、いずれの都市圏においても、男性が女性よりも転出・転入者の割合は共に高くなっている(図表1-7)。
他方、転出入の差(純流入)の割合については、三大都市圏とも女性が男性を上回っており、東京圏では男性が0.3%、女性が0.4%の転入超となっている。純流入割合は、いずれの都市圏においても女性が高い。
(東京圏への女性の純流入が男性を継続的に上回るようになったのは2010年前後から)
東京圏における男女別の転出入数を長期的にみると、転出数・転入数ともに男性が多い傾向が続いていることがわかる(図表1-8)。次に純流入についてみると、1980年代は男性の純流入が多かったものの、90年代になると女性の純流入も増加し、95年には女性の純流入が1万人上回った。2000年代に入り、男女の純流入数は拮抗していたが、2010年以降は、女性の純流入が1万人以上男性を上回る傾向が続いている。
こうした女性の東京圏への流入は、一部地域において未婚者の男女比に偏りを生じさせる要因ともなっていると考えられる5。