第4章 (1)2024年の物価上昇率及び賃上げの状況

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(大手製造業が立地する地域で高い賃上げによる平均所得向上が期待されるも地域差が存在)

2024年の賃上げの状況について、春闘の賃上げ率(定昇込み)を地域別の状況をみると、全国平均5.08%、各地域でおおむね3~6%台と高い妥結結果となっている。一方、物価の動向をみると、消費者物価は足下で緩やかに上昇し、上昇率には地域による差異がそれほど見られない。今後、春闘の結果が賃金に反映されていくことにより、各地域で物価上昇率を上回る賃金上昇の実現が期待される。ただし、地域ごとに異なる賃上げの状況や物価動向には留意が必要である(図表4-1)。

賃上げの地域差については、特に、群馬県・広島県など大手製造業が立地する地域で、全国平均を上回る妥結結果となっている。こうした地域では労働組合加入率も高い傾向にあるため、今後高い賃上げによる平均所得向上が期待される。

また、青森県・山形県・島根県などでは、妥結結果が全国平均を下回るとともに、相対的に労働組合加入率も低く、春闘が平均賃金の上昇に寄与する度合いが限られる可能性がある。こうした地域では、診療報酬等における加算措置等を通じた医療・福祉分野の賃上げ促進など、組合加入率の低い産業や、中小企業への幅広い賃上げの浸透が特に重要となる。

一方、足下の消費者物価上昇率には地域による差異がそれほど見られないが、光熱費・家賃・交通費などの消費支出の比率は、他の費目と比べて地域間での差が大きく、またこれらの費目は地域別に価格動向が異なることから、今後価格変動がある場合に地域ごとの異なる影響を注視する必要がある。また、上述のように、地方部では、食料品等の必需品への支出の増加が、被服・履物や教養娯楽といった項目の支出抑制につながっていることがうかがえ、今後必需品での価格上昇に伴う支出の増加が続けば、大都市よりも小都市・町村において、防衛的な意識がより強まり、裁量的な項目の支出抑制が顕著になる可能性がある点も注意を要する。

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