『地域の経済2023』の公表にあたって
「地域の経済」は、内閣府が年1回公表する地域経済に関する報告書です。
2023年に入り、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類へと変更され、我が国経済も本来の自律的な景気回復の歩みを再開しました。こうしたコロナ禍からの経済社会活動正常化の動きを背景に、各地域で人流及び宿泊・飲食サービスなどに対する需要の回復が進みました。
第1章では、「地域における人手不足問題の現状と課題」として、こうした需要の回復に伴い各地域で深刻化する人手不足問題に焦点を当て、労働供給サイド、労働需要サイド、そしてマッチングという三つの視点から構造的課題を整理し、対処方策について検討を行っています。まず、労働供給サイドの視点からは、いわゆる「年収の壁」による就業時間調整や正規雇用比率の地域差、若い女性が地方から東京圏に流出する要因等について分析を行っています。次に、労働需要サイドの視点からは、宿泊・飲食サービス業と医療・福祉分野の就業者数変化の地域差とこれらの産業の労働生産性向上に向けた課題等について検討を行っています。さらに、マッチングの視点からは、地方のマッチング手法の課題について整理した上で、新たなマッチングの広がりについて先進事例を紹介しています。
また、地域における人手不足問題として、「物流業の人手不足問題」を補論として取り上げ、労働供給面での課題と労働生産性が低い要因を明らかにするとともに、課題解決に向けた方策の検討を行っています。
第2章では、「2023年の地域別にみた経済の動向」として、2023年を中心に地域経済の動向を概観しています。経済社会活動の正常化に伴い景気ウォッチャー調査からみる景況感がどのように変化したか、また、経済の回復過程で各地域の消費・生産活動にどのような地域差が生じていたか、各種データを基に分析しています。
本報告が地域経済の現状に関する理解を深めるとともに、地域経済の活性化に向けた取組を検討する際の一助となれば幸いです。
最後に、本報告の作成にあたって、企業や地方自治体、関係省庁などの皆様にヒアリングやデータ提供等を通じて御協力を賜りました。この場を借りて深く感謝を申し上げます。
2023年12月
内閣府政策統括官(経済財政分析担当)
林 伴子