第3章 第1節 景気ウォッチャー調査からみた各地域の景況感
ここでは、景気ウォッチャー調査の現状判断DI(季節調整値)の推移を中心に、2017年後半以降、各月の景況感の変化を、各地域での特徴的な出来事などとともに振り返る。
2017年7月に49.7であった現状判断DIは秋にかけて上昇を続け、11月には、消費税率引き上げ直前となる2014年3月以来の水準である54.1まで上昇した。その後、12月にはほぼ横ばいであったものの、翌2018年1月に前月差▲4.0ポイント低下の49.9と低下し、その後、低下と上昇を繰り返し2018年10月には49.5となっている(第3-1-1図)。以下では、特徴的な出来事があった月について記載する。
2017年7月には、九州北部豪雨が発生し、その影響もあり、全国では、前月差▲0.1ポイントであったが、九州地域では前月差▲3.4ポイントとなった。九州地域では、翌8月には、前月差+2.9ポイントとなり、豪雨の影響によるDI低下分をほぼ取り戻した。
2017年10月には、現状判断DI(全国)は前月差+0.9ポイントだったが、分野別では、飲食関連が同▲6.0ポイントと大幅に落ち込んだ。これは、週末に台風が直撃し、天候不順が影響したことなどで人出が減少したといった指摘もあった。飲食関連は、翌月には前月差+7.3ポイントと前月の落ち込みを取り戻すとともに、現状判断DIも前月差+2.1ポイントと更に上昇した。
2018年1月には、前月差▲4.0ポイントと大幅な低下となり、また、全分野、全地域で低下となった。背景としては、大雪や寒波などの天候要因による来客の減少や、野菜を含む生鮮食品価格の高騰、灯油・ガソリン等の燃料価格の上昇があげられる。特に、平年と比べて降雪量の多かった東北、関東、甲信越、北陸、九州といった地域では、全国と比べて現状判断DIの低下幅が大きいという傾向がみられた。翌2月には、北陸地域で豪雪被害が生じ、景気ウォッチャーのコメントでも言及が多数みられたが、DIの低下幅は▲1.8ポイント低下と限定的で、生産にはあまり影響がなかったというコメントもみられた。
2018年5月には、前月差▲1.9ポイントと低下した。現状判断DIが低下した背景について、低下幅の大きかった家計関連の回答者のコメントでは、大型連休中の客足の伸び悩み、身近な生活用品(飲食料品、ガソリン等)の値上げによる影響、人手不足や原燃料費増による収益圧迫、国際政治情勢や金融市場の不透明感などが指摘された。
2018年6月には、大阪北部地震が発生したが、近畿地域の現状判断DIは全国の上昇幅を上回っており、コメントでも影響は限定的であったことがうかがえる。
2018年7月には、平成30年7月豪雨の影響が広範囲にわたってみられた。全国は前月差▲1.5ポイント程度の低下であったが、特に被害の大きかった中国地域(前月差▲6.5ポイント)、四国地域(同▲5.6ポイント)での低下が大きかった。現状判断の回答者のうち、中国地域では42.2%が、四国地域では20.9%が何らかの形で豪雨に言及するなど、影響が大きかったことがうかがえる。翌8月調査では、中国地域は前月差+3.7ポイント、四国地域は+5.7ポイントとなり、中国地域でも半分以上は下落幅を戻している。翌9月調査では、中国地域は前月差+2.5ポイントとなり、おおむね被災前となる6月と同程度の水準までDIが上昇した。
2018年9月には、台風21号(9月4日上陸)の被害により、関西国際空港が一時閉鎖されたことや北海道胆振東部地震(9月6日発災)及び地震による停電の影響がみられた。全国的には前月差▲0.1ポイント程度とほぼ横ばいであったが、北海道地域では前月差▲11.6ポイント、近畿地域では▲0.8ポイントとなり、特に北海道で現状判断DIの大幅な低下がみられた。両地域ともに、外国人観光客の多い地域であることから、旅行・観光への影響の他、生産・生活面の影響がみられた。
直近の2018年10月調査では、2018年7月以降の累次の災害の影響も弱まり、天候も安定したことから、前月差+0.9ポイントの49.5となった。また、北海道地域の現状判断DIは前月差+5.7ポイントの41.8となり、9月に北海道胆振東部地震の影響で低下した幅の半分程度を戻している。
(第3-1-2図)