第1章 地域別にみた経済の動向

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2016年前半は、世界的な景気先行き懸念と投資家のリスク評価が不安定化したことを背景に、年初から株価や為替レートが大きく変動した。6月に行われた英国の国民投票によりEU離脱が支持されたことが世界経済の先行きを一層不透明にしたことも、株価と為替レートに大きく影響した。こうした金融・為替市場の不安定化は、マインド面を通じて消費・投資行動の慎重さを招き、結果として需要を抑制する可能性がある。一方、2月には大手鉄鋼メーカーの火災事故、4月には熊本地震の発生等により、供給側にもサプライチェーンの寸断という事態が発生し、生産活動は制約された。第1章では、こうした2016年前半を中心に地域経済の動きについて整理する。

<ポイント>

○地域別の経済の動向をみると、アベノミクスの取組の下、有効求人倍率が47都道府県全てで1倍を超えるなど、全体として労働需給は引き締まりつつある。消費は2016年前半には伸びが鈍化、生産は、2016年4月の熊本地震などの一時的な要因もあったが、総じておおむね横ばい。

○消費は、小売販売額の伸びが鈍化し、業態によっては前年割れが続いている。特に、3大都市圏の百貨店等は、衣料品の低迷に加え、インバウンド需要の伸びが一服。ただし、外国人旅行者の購買単価は下落しているが、人数は増勢が続いており、多くの地域で客室稼働率も高めで推移。サービス支出は底堅く推移。

○生産は2016年4月の熊本地震などの一時的な要因もあり、九州や東海で大きく下落したが、医薬品等への特化がみられる地域の稼働は高い水準。非製造・サービスは景況感の悪化がみられる地域が多いが、中小企業に限ると改善傾向。投資が増加している地域は多いが、利益額の改善に足踏み。過去30年で産業特化も大きく変わり、地域・業種によって海外経済からの影響度に違い。

○労働需給は全ての地域で引き締まりつつあるが、パートタイム労働者比率の上昇により、賃金上昇率は有効求人倍率の改善に見合った水準以下。また、アルバイト・パートの時給賃金は上昇しているが、フルタイムは伸び率が低い。人口減少局面に入り、需給がタイトでもある中、新たな労働供給の源は女性と高齢者。特に、女性の労働参加率は地域差が大きく、伸びる余地も。都道府県レベルの分析では、女性の労働参加率は保育所定員を増やす、正規雇用率を引き上げる、男性側の長時間労働を是正することで高まる。高齢者の労働参加率には、家族の介護負担が影響。介護の支援体制の拡充により、家族の負担を減らし、継続的な労働参加を促すことで、マクロ的な成長促進が可能。働く環境の整備、働く者への社会的な支援が重要。

○2016年4月の熊本地震によるストック毀損額は約2.4-4.6兆円、GDPの損失額は900-1,270億円程度にのぼり、宿泊のキャンセル等による観光業への影響や、サプライチェーンの寸断による各地域の生産への影響も発生。復旧・復興に係る補正予算が成立したが、観光支援策として出された「九州ふっこう割」の予約は好調であるなど、今後に期待。

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