『地域の経済2015 -経済好循環の地域経済への波及とばらつく景況感-』の公表にあたって

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内閣府経済財政分析担当では、年1回、「地域の経済」と題して、地域経済に関する報告書を公表しています。今回は、2015年の動きを中心に、アベノミクスの政策を推進する中、経済の好循環が地方へと波及しつつある姿について概観し、さらに波及させていくための課題等について明らかにしています。

我が国経済は、「三本の矢」の一連の経済財政政策により、2013年以降、景気拡張局面へと移りました。三年程度の間に、最重要課題であったデフレ脱却については、デフレではない状況をつくり出し、失業率や有効求人倍率等の労働需給を表す指標も大幅に改善しました。こうした状況は我が国各地域においても確認できます。

しかしながら、企業収益や雇用・所得環境は改善している中にあって、賃金上昇が十分に物価上昇を上回るには至っていないことなどもあり、個人消費の回復は遅れています。2015年以降も、国際金融市場の変動、さらには原油価格等の低迷などを背景に、世界的にリスクオフの動きがみられており、「成長と分配の好循環」に向けて着実な取組が重要となっています。各地域の経済動向もこうした世界や日本経済の動きと連動しています。

今回の報告は、消費、生産、雇用といった切り口から地域レベルでの動きと地域間比較を示すことによって、我が国経済を立体的に把握するように構成しています。また、地域の産業特化によっては、減速する海外経済の影響を強く受けている地域がみられる一方、アジア地域の中間層拡大やビザなどの規制緩和によって、かつてない訪日外国人旅行者による観光関連の需要創出が顕著となる地域もあり、その姿は様々です。さらに、東日本大震災から5年目になることを踏まえ、被災3県の経済情勢についても整理しています。本報告が地域経済の現状と課題に関する理解の一助となれば幸いです。

最後に、本報告の作成にあたって、関係省庁、地方自治体や企業などの皆様にヒアリングやデータ提供等を通じてご協力を賜りました。この場を借りて深く感謝を申し上げます。

 2016年3月

内閣府政策統括官(経済財政分析担当)

田和 宏

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