第1章第1節
1.消費の動向
(百貨店等では大都市圏で先行して改善)
今次回復局面における消費動向を、大都市圏の動向と地方の動向を比較しつつ概観する。
大型小売店販売額(消費税込)をみると、2013年1~3月以降、東京都、愛知県、大阪府で全国平均に比べて先行して回復した。また三都府県では、2014年初めの駆け込み需要でも比較的高い伸びを示すのみならず、反動からの回復も早くみられた(第1−1−1図)。
足元の動向について、百貨店売上高(消費税抜)をみると、東京、大阪を始めとする都市部で駆け込み需要の反動からの回復が早くみられた。一方、他の地域では夏の天候不順や物価上昇の影響が相対的に強くみられたことなどから、これまで続いてきた持ち直しの動きに足踏みがみられる(第1−1−2(1)図)。
また、スーパー売上高(消費税込)をみると、緩やかに反動から回復する中で夏には天候不順等を受けた生鮮食料品の値上がり等により関東のみならず北海道、東北及び九州等で前年比プラスの伸びとなった。9月に入り伸び率が低下またはマイナスとなる地域がみられたが、足元では前年比プラスとなる地域がみられるなど、総じてみれば底堅い動きがみられる。なお、四国においては大雨等により夏季に売上高が大きく減少していることにも留意が必要である(第1−1−2(2)図)。
(乗用車販売は足元では持ち直し)
乗用車販売をみると、駆け込み需要とその反動の緩和等を視野に入れた自動車取得税の引下げやエコカー減税の拡充等の措置がとられたこともあり、駆け込み需要が2013年後半から2014年初めにかけてみられ、観光需要が旺盛な沖縄を除いては販売のはく落がみられたが、足元においては総じて持ち直している(第1−1−3図)。
(資産効果の影響は大都市圏で大きい可能性)
このように大都市圏の消費が先行して改善する背景については後述するように現金給与総額と就業者数の改善の影響が考えられるほか、以下の要因が考えられる。
世帯の株式保有の状況をみると、大都市圏は他の地域と比べ高くなっており(第1−1−4図)、株式相場上昇による資産効果を受けやすくなっている可能性がある。
(観光は引き続き好調であるが、免税店や宿泊客数は大都市圏に偏り)
次に訪日外国人客数をみると、2012年10月以降は中国からの観光客が対前年比で減少に転じていたが、約1年後の2013年9月以降は上昇に転じ、中国からの観光客の着実な回復がみられる(第1−1−5図)。また航空便の増加やビザ制度の改定1等もありアジア地域を中心とした他地域からの観光客もおおむね増加傾向にあることから、全体では対前年比で二桁を超える訪日外国人客数の伸びがみられており、国内消費の喚起につながっているものとみられる。
また北海道、沖縄への入域観光客数をみると、沖縄においては天候要因により8月の伸び率は鈍化したものの、それを除けば二桁近傍での高い伸び率で推移している。この背景としては、国内旅行客は新石垣空港の開港やLCCの増便等、外国人旅行客は一括交付金を活用した沖縄観光プロモーションの効果や那覇クルーズターミナルの供用開始等が挙げられる2。一方で北海道は、観光客数の水準そのものは高いものの、鉄道での来訪者が減少したことや、昨年度がイベント等により高い伸びを示したことの反動から、足元では前年を下回っている3 (第1−1−6(1)(2)図)。
このように外国人観光客の伸びはこのところ堅調に推移しているが、一方でその消費需要を取り込むための外国人観光客向けの免税店は東京・大阪周辺に偏っており(第1−1−7図)、加えて宿泊客数は東京周辺や大阪周辺に大半が集中していることから(第1−1−8図)、外国人観光客の消費はこの地域の百貨店等の売上には寄与したものの、地方への波及が限定的であった可能性がある。