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『地域の経済2012 -集積を活かした地域づくり-』の公表にあたって

内閣府経済財政分析担当では、年1回、「地域の経済」として、地域経済に関する報告書を公表しています。

日本経済は2011年3月11日に発生した東日本大震災は大きな被害と原発事故を伴い、その復旧・復興はいまだ道半ばです。その過程においても、2011年夏ごろには欧州政府債務危機が再燃、円高も進行し、秋にはタイの洪水も加わりました。2012年前半にはエコカー補助金に伴う自動車関連の生産増加などもみられましたが、年央には同補助金の効果剥落や世界経済の減速、尖閣諸島をめぐる状況の変化などが生じ、地域経済にも大きな影響を及ぼしています。

一方、グローバルな競争が地域経済を巻き込む形で激しさを増し、いわゆる空洞化懸念が高まる中で、各地域は希少な資源をいかに有効に活用して世界に臨み、住民の生活基盤を維持、強化していくかが問われています。

以上のような状況を踏まえ、本報告書は次のような3章立ての構成のもと、地域経済の現状と課題について分析を行いました。

第1章では、様々なショックに晒されたこの1年間の地域経済を概観しています。その中で、復興や政策関連の需要、海外景気の動向等が、地域の産業構造などの違いを通じて、各地域にどのような形で波及したかを明らかにしました。

第2章では、東日本大震災の被災地における復旧・復興の動向と今後の課題を整理しています。ここでは特に、被災地の中での状況の違いに留意しつつ、復旧・復興が遅れている点、困難な点やその背景を浮き彫りにするよう努めました。

第3章では、「集積」を活かした地域づくりについて検討しています。すなわち、地域における「集積」が、イノベーションを生み出し、暮らしの質を高めていくための有力なメカニズムの一つであると考え、その現状について多面的な分析を試みました。

今こそ、各地域が人口減少や高齢化といった現実を前に悲観論に陥ることなく、その個性を活かして中長期的な発展に向けた取組を果断に実行していくときです。

本報告が、こうした重要な時期に、議論の材料を提供し、地域経済の発展に向けた取組の一助となることができれば幸いです。

最後に、本報告の作成にあたって、関係省庁、地方自治体やその他の皆様にヒアリングやデータ提供等を通じてご協力を賜りました。この場を借りて深く感謝を申し上げます。

2012年11月

内閣府政策統括官(経済財政分析担当)

西崎 文平

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