第2章 まとめ
2008年秋以降の急速な景気悪化のあと、経済対策の効果もあり、景気に持ち直しの動きがみられる地域が広がりつつあるものの、地域経済を取り巻く情勢は依然として厳しい。本格的な需要の回復が、当面は見込めないことから、大半の地域において、設備投資が2008年度、2009年度と2年連続で低下すると見込まれる。
しかし、地球温暖化問題の解決に向けて、太陽光発電や風力発電といった新エネルギー関連、電気自動車やハイブリッド車向けの二次電池関連、エネルギーの貯蔵・平準化のための蓄電池関連等の投資に対しては、各地域で戦略的な投資が活発化している。また、地球規模で資源制約が厳しくなるなか、秋田県北部のように、かつて鉱山業で培ってきた金属の分別・抽出技術を廃棄された家電からのレアメタルの抽出といった新たな分野に応用している地域もある。
二酸化炭素(CO2)の排出量削減に向けて、太陽光発電システムの設置、環境対応車への乗り換え、グリーン家電への買い替えにみられるように、個人レベルでの取組が国・地方自治体の双方の支援もあり、各地域で活発化している。地域レベルでは、地域で消費するエネルギーを従来型の化石燃料によるエネルギーではなく、その地域の気象条件、水、森林、産業等の特性を活かして再生可能エネルギーに求めようとする「エネルギーの地産地消」に取り組む地域が広がるとともに、グリーン電力証書購入等によって、再生可能エネルギーの利用が官民ともに広がっている。CO2排出量の削減や森林のCO2吸収力向上に向けては、都市と地方の自治体間の広域連携、森林の多い自治体と都市で活動する企業との間の連携等の互恵的な関係が構築されてきている。
農業が地域の主要産業である地域の多くは、農業従事者の減少・高齢化の進行による担い手不足の課題を抱えている一方、公共事業が削減されるなか、地域経済の自律的な発展に向けて、地域経済の中での農業に対する期待は高まっている。農業を取り巻く状況は厳しいものの、地元産の農産品に、農商工等連携によって新たな付加価値を付与し、地域の特徴ある商品として売り出そうとする取組が広がっている。また、小売・外食分野での競争が激化するなか、消費者ニーズに合った商品を提供するため、小売や外食等の異業種からの農業参入も増加し、農業の活性化につながる動きが各地域で始まっている。
消費者の「安全」「健康」「癒し」「環境」に対するニーズは高まっており、地域発の成長を持続的なものとするには、こうした消費者ニーズを敏感に捉えることが重要である。また、消費者の「安全」「健康」「癒し」「環境」に対するニーズの高まりは、消費者が環境や自然に対する価値を再評価しているものと捉えることもでき、地域経済の停滞が懸念されてきた中山間地や農林漁村においても、豊かな自然があることを強みに、消費者ニーズに応じた商品・サービスを提供できる可能性を秘めているとも言える。「環境」と「農業」の分野においては、地域資源や地域の特性を核として、業種や地域の垣根を越えた連携を通じて地域発の成長につなげようとする動きが各地域で既に始まりつつある。こうした動きを社会・消費者ニーズと合致させ、持続的な成長につなげていくことが求められる。