『地域の経済2008―景気後退と人口減少への挑戦―』の公表にあたって

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本年の「地域の経済」は、2008年の地域経済の動向のほか、地域経済が直面する人口減少の状況と課題、地域における経済活性化の取組について分析を行っています。

第1章の「世界経済の激変の影響を受ける地域経済」では、最近1年間の地域経済の動向について分析しています。日本経済は、世界経済の減速に伴う輸出の減少、原油・原材料価格の高騰等を主因として、景気後退局面に入りました。当初、その減速テンポは比較的緩慢とみられていましたが、2008年秋以降、欧米で金融危機が深刻化し、その影響が世界経済全体に広がっていくなかで、急速に厳しさを増しています。そこで、本章では、景気後退が地域経済に及ぼしている影響を、企業部門と家計部門とに分けて分析しています。

第2章の「人口減少圧力の強まる地域経済」では、地域経済が直面する人口減少について分析しています。我が国の総人口は既に減少し始めていますが、人口減少の進み方やその程度には地域差があります。しかも、このところ、人口の増加を続ける地域がある一方、減少テンポを速める地域もあり、地域差が拡大しています。こうした状況の下では、地域経済の活力や都市関連サービスの水準を維持するため、広域的エリアにおいて拠点となる市の役割が一層重要になります。そこで、地方圏にある人口20万人程度以上の都市を取り上げ、こうした市が広域的な拠点として果たす役割を、就業機会の提供面に焦点をあてて分析しています。

第3章の「地域経済活性化の新しい波」では、近年、人口減少地域において盛り上がりをみせる経済活性化の動きを、3つの「新しい波」として紹介しています。第1の波である「結輪(ゆうわ)力」は、様々な地域資源を連携させることで地域の特色や底力を発揮させる力、第2の波の「地際(ちさい)力」は、域内需要が減少するなか、域外需要や域外との交流を活性化につなげる力、第3の波の「住民力」は、公的サービスを住民・民間が主体となり、行政サービスを補完する形で提供する力です。地域経済の活力低下が危惧される地域において、これら3つの「新しい波」をうまく活かし、地域活性化につなげていくことが期待されます。

このように、地域経済は景気後退や人口減少という厳しい状況に直面していますが、各地域がその特色を活かしながら活性化に取り組む際に、本報告がその一助となれば幸いです。

2008年12月

内閣府政策統括官(経済財政分析担当)
齋藤 潤

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