第2部 第2章 5.今後の業務継続について~7.まとめ
5.今後の業務継続について
今後の業務の継続については、70%近くが続けたいと回答している。理由としては仕事量の確保を挙げる団体が半数以上であり、十分な収益性の確保を見込んでいるのは全体の10%弱に過ぎない。とりあえず量の確保が最優先であることが示された。
また、民間企業やNPOは60%が他業種への参入の意思を持っており、積極性がうかがえる。
第2-2-35図 今後の業務継続意志 |
第2-2-36図 業務継続理由、他業種への参入意思 |
6.いくつかの効果の試算
指定管理者制度の導入は、民間の手法を導入することで利用者満足度を高めるだけでなく、財政支出の削減効果も期待されている。
市場規模を算定した先行調査では、施設の管理費の合計を市場規模とみなし、一部の施設に限定される場合は2兆、全施設が対象となる場合は10.5兆円の経済効果があるとしている13。
ここでは地方公務員数に着目したい。第1章でみたとおり、公務に従事する人の割合の高い地域ほど労働生産性は低いという傾向がみられており、公務員数自体の削減とともに、公務部門における人員を効率的に配置することで、公務部門自体の生産性を上昇させることが課題になっていると考えられるためである。
指定管理者制度に移行しうる施設14における地方公務員定数を全て足し上げると31.4万人ほどになる。これは地方公務員総数の10.7%に当たる15。さらに地方公営企業やダム、下水道事業など公営企業16に係る人員を入れると、総計69.8万人にもなる。これらに公務員の1人当たり人件費を掛け合わせると、前者の場合2.6兆円、後者の場合5.7兆円ほどの人件費が削減できることになる。
ただし、公募対象であっても実際には今まで勤務していた職員を再雇用する場合が4割程度みられ、半分以上雇用することになっている場合が1/4程度あることには留意する必要がある。現行法体系において、自然減以外の手法による公務員数自体の削減は容易ではないが、少なくとも、業務を効率的に、また、利用者に喜ばれるように遂行しようという意識は高まるのではないだろうか。
第2-2-37表 指定管理者制度の対象となりうる業務に従事する地方公務員数 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(単位:人) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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第2-2-38表 指定管理者制度の対象となりうる事業の現在の人件費(試算) | ||||||||||||
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7.まとめ
公的サービスの民間開放は、門戸は開かれたものの、このアンケートでみる限り、民間企業の参入はまだ途上と言ったところである。しかし、実際に参入を果たした企業は今後も業務を継続したいと希望するところも多く、民間企業にとっては、「公的サービス市場」という新しい市場が開けてきていると言える。しかも、指定管理者制度は企業規模の比較的小さいところでも参入が可能となっており、大企業しか参加できないという批判は当たらない。
この制度が当初の制度設計の趣旨に沿って、民間企業の参入を誘発し、公的サービスにおいても民間企業並の効率性を発揮するためにはいくつかの条件が必要であることも見えてきた。
まず、公募に当たっては、民間企業が参入機会を十分に確保できるような公募の仕組みを整えることが必要である。アンケートでは、民間企業から、仕様が分からない、説明が不十分、告知期間が短いといった問題点がより多く指摘されてているところである。また、公募の決定に当たってはその基準を示した上で、透明性を確保することが望まれており、しかも、企業の知的財産権の侵害につながらないような何らかの保護を取るべきである。
実際の管理業務に当たっては、責任の所在を明確にして、想定外のリスクにも対応出来るような体制作りをすべきである。管理業務に際しては、当該団体の持つノウハウを最大限に発揮できるように、従前の職員の再雇用を義務付けるといった留保条件はつけないことが望ましい。
指定管理者制度が施行されてから3年余り、専門性を持つ職員を配置できたことや、利用時間・日数の延長など、運営後にサービスが改善した点も多く、利用者からはおおむね評価されている。制度の運用に際して、このアンケートで浮き彫りになったような問題を解決することで、制度がよりその効果を発揮し、民間活力が十分に注入されることで、公共部門の効率性の追究にも一役買うことになるであろう。
13. | 「パブリックビジネス研究会提言-指定管理者制度へのより良き取組みのために」(小野由理、西松照生、自治体チャンネル(04年10月2日号) |
14. | 今回の調査で指定管理者の対象となった施設に全地方自治体が指定管理者制度を導入し、民間事業者が指定管理者として選出された場合を想定。 |
15. | 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(06年7月7日閣議決定)によると、地方公務員人件費について、「5年間で行政機関の国家公務員の定員純減(△5.7%)と同程度の定員純減を行うことを含め大幅な人件費の削減を実現する」としている。 |
16. | 公営企業は指定管理者制度ではなく、民営化や市場化テストという手法の活用も考えられる。 |