第1章 第2節 集積メリットの活用を模索する各地の実例 1.

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第2節 集積メリットの活用を模索する各地の実例

1. 各地域における多様な地域集積の実例調査

地域クラスターの所在地 北海道

(この地域の特徴)

  • * クラスターの効果に着目し、産学官連携機能の集約が実現
  • * 道内各地において多種多様なクラスターの形成が始動

(フィンランドへの調査団がクラスターに着目)

北海道経済が道内の資源や技術力に立脚する「自立型」へ移行するための方策を検討していた北海道庁は、95年に経済団体と民間企業も参加する調査団を、人口や自然条件等が類似しているフィンランドへ派遣した。この調査の結果、「産業集積の効果」に着目し、「産業クラスター創造活動」に着手した。

調査団に参加した北海道経済団体連合会の呼びかけにより、96年に「北海道産業クラスター創造研究会」が発足した。この研究会による「北海道産業クラスター創造に向けて」という報告書は、北海道が強みを持つ農林水産業や食料品工業等の「食」、木材産業の集積と寒冷地ゆえの技術的蓄積がある「住」、広大で豊かな自然の魅力を持つ「遊」を重点分野とすることを提言し、北海道構造改革の方針の一つとなった。

そして、関係団体(道内経済4団体、北海道庁、札幌市、北海道大学、小樽商科大学、北海道通商産業局)によってクラスター創造活動を推進する組織の集約が図られ、まず98年に、地域振興において実績のある(財)北海道地域技術振興センター内に「クラスター事業部」が設置された。その後、2001年には他組織との統合によって「(財)北海道科学技術総合振興センター(通称:NOASTEC)」が発足し、現在に至っている。

(組織横断的な連携を取りやすい環境を活用したプロジェクト)

北海道は、組織横断的な政策を実行しやすい環境にある。地域区分と行政区分が一致しており、他の県との競合が少なく、北海道庁と地方出先機関との目的も一致しやすい。官庁間にとどまらず、産業界との関係についても様々な障壁を越えた活動が実行されやすい土地柄である。NOASTEC は、これを利用して官庁、市町村や業種の枠を越える以下のような活動を行っている。

  • ○「地域クラスター研究会」の結成:産業クラスターによる地域づくりの活動主体として、道内各地に「地域クラスター研究会」の結成を呼びかけている。参加地域は、98年当初の12か所から、2003年には28か所1,200名にまで広がった。農畜産物、環境改善、観光等の多分野にわたり、産業クラスターにおいて中核となる可能性があるプロジェクトの検討に着手している。
  • ○「コラボほっかいどう」の運営:NOASTEC は、産学官連携推進組織「北海道産学官協働センター(通称:コラボほっかいどう)」を運営している。改正された研究交流促進法の適用

第1号として、民間施設でありながら国有地(北海道大学)に建てられた。入居企業の開発した「電気式人口喉頭」がグッドデザイン賞を受賞したほか、「介助支援トランスファー装置」「乳酸菌を利用した胆汁酸の吸着方法」「コンブ仮根から成る食品素材」等の成果により、特許を出願又は取得している。

  • NOASTECの活動
  • ○事業化の支援:地域クラスター研究会や企業から持ち込まれた事業案を、民間コーディネート機能の導入と専門アドバイザーによるチーム結成等により、開発リスクの軽減に努めて試作検討する。北海道においてクラスターとして扱う必然性を評価しつつ、起業・製品化を支援している。2002年度末までにおよそ200件が審査され、45件が売上実績を上げ、さらに20件が販売を計画中である。
  • ○交流の促進:自由な意見交換を通じて共同研究テーマの発掘や事業分野の拡大を図ることが重要と考え、コラボほっかいどうに専用スペースを常備し、産学官連携を促進するための交流会を積極的に開催している。また、居酒屋が会場になるときもあるが、異分野の研究者、起業家等が同じテーブルを囲んで談笑する中から、新たな発見と創造が生まれることを目指している。

(産学官連携の一大拠点を目指す情熱)

産業の発展には知識と技術が必要であり、北海道大学北キャンパスとその周辺地域は、そのための拠点となっている。ここにはコラボほっかいどうの他にも、同大学付属や道立の研究試験機関が数多く立地している。こうした集積を活用して、産学官連携の研究や事業の一大拠点を築くのが「リサーチ&ビジネスパーク構想」である。

その運営組織として2002年に発足した「北キャンパス・周辺エリア産学官連絡会(通称:北キャンパス町内会)」には、北海道大学と周辺機関が人材を提供している。前町内会長を務めた藤田正一北海道大学前副学長は、「ここで我々に問われるのは、産学官それぞれが、どれだけ真剣さを持ってこのプロジェクトに荷担できるかであろう。本当に必要なものなら、小規模でも、血を流してでも、プロジェクトを推進し、未来に投資すべきだ。三者(産学官)それぞれにできるところで「出資」して、このプロジェクトを育てていきたい。」と述べている。

現在も、「次世代ポストゲノム研究実験棟」「創成科学研究棟」「触媒科学研究センター」「ナノテクノロジー研究センター」が建設中であり、クラスターの一層の活性化が期待されている。

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