経済の回顧(要旨)  平成11年(平成11年12月27日)

平成11年経済の回顧と課題-経済新生への道程-

平成11年12月
経済企画庁調査局

目次

第1章

第1節  緩やかな改善が続く日本経済

厳しい景気後退から緩やかな改善をみせる日本経済

  1. 日本経済は97年春から90年代に入って2度目の厳しい景気後退
  2. 99年夏ごろからは、政策効果やアジア経済の回復の影響などで緩やかに改善し、その状況が持続(第1-1-1図

足元明るさがみられる景気動向指数と縮小した需給ギャップ

  1. 景気動向指数をみると、先行指標は3月以降基調として50%超え、一致指数も7月から10月まで4ヶ月連続で50%超え
  2. 需給ギャップは今回の景気後退局面で最も厳しかった98年10-12月期に比べると1.4%も改善(第1-1-2図

民間消費のGDP全体への波及関係の高まり

GDPの各項目の波及関係をみると、

  1. 高度成長期には民間設備投資→GDP、民間消費支出の因果関係が強い
  2. 安定成長期に入ると、財貨・サービスの輸出→GDP、民間消費支出→GDPという関係もみられるようになる。

GDP、物価、失業率のマクロ的関係

  1. GDPと失業率の関係をみると、GDPが変化した場合に失業率が変化する度合いは、80年代より90年代の方が低下
    →過去に比べるとGDPの増加(減少)と失業率の低下(上昇)の関係が薄まる
  2. 失業率と物価の関係をみると、NAIRU(物価上昇率を加速させない失業率)は、70年代は1.6%、80年代以降は2.5%と上昇
  3. GDPと物価の関係をみると、総供給曲線は、70年から90年の推計期間と直近までの推計では余り変わらない一方、総需要曲線の傾きが急に

今後の景気回復の展望とその留意点

当面の展望をみると、

  • 個人消費→冬のボーナスの減少等→回復は緩やかなものに止まる可能性
  • 設備投資→過剰設備の存在、期待成長率の低下等→急速な回復は見込めず
  • ⇒当面、政策が景気を下支えをする必要性⇒99年11月経済新生対策の決定
  • ⇒一方、アジア向けを中心とした生産財輸出の増加⇒生産の持ち直し、企業の業況判断の改善、企業収益の持ち直し
  • ⇒2000年の日本経済は民間需要の回復という十分条件がいつ満たされるかが鍵

第2節  足踏み状態にある個人消費

足踏み状態にある個人消費

  • 個人消費は、緩やかに回復してきたが、秋には足踏み状態

減税で下支えされる可処分所得

  • 98、99年度と収入が低迷する中、減税等の政策効果が可処分所得を下支え
  • しかし、最近、生産面の持ち直しの動きを背景に、所定外給与に改善の兆し

持ち直しつつある消費者マインド

  • 97年の金融機関の経営破綻やアジア通貨・金融危機の影響などを背景に悪化した消費者マインドは、持ち直しつつある
    →消費者マインドの改善が消費性向を上昇させる(第1-2-4図

上昇している不確実性

  • 家計の認識するリスクプレミアムは徐々に高まりつつある(第1-2-5図
  • 家計の保有する非人的資産は横ばい傾向(資産効果は期待できない) →現在所得の低下に加え、将来所得の低下が消費を抑制する要因となった可能性が高い
  • ただし、98年10-12月以降、リスクプレミアムはわずかながら減少 →消費者マインドの持ち直しの時期と一致

低迷している耐久財消費

  • 現在所得及び将来所得の低下に加え、ストック調整効果が働いている可能性がある
  • また、かつてより耐久年数が長くなっており、以前より低迷する期間が長く続く可能性を示唆

消費回復に向けて

  • 教養娯楽、交通・通信は、堅調な動き
  • 住宅着工の増加→耐久財消費の押し上げ効果
  • 雇用所得環境は、持ち直しの兆しもみられるが、依然厳しい

第3節  前年を上回る水準で推移する住宅建設

前年を上回る水準で推移する住宅建設

  1. 99年4-6月期に高い伸び(第1-3-1図
  2. 年前半に増加した持家着工、後半に増加したマンション着工

年前半を支えた持家の盛り上がり

持家着工戸数は、99年1-3月期前期比14.0%増、4-6月期12.0%増と伸びた
  背景=住宅ローン減税や住宅金融公庫金利の引上げ幅の圧縮

先行指標との関係

  1. 住宅金融公庫融資申込受付件数:1四半期程度のタイムラグ
  2. 住宅展示場来場者数:2四半期程度のタイムラグ

年後半に盛り上がりをみせた分譲マンション

分譲マンション着工は、99年7-9月期前期比31.5%増と伸びた
  背景=マンションの平均工期は約13ヶ月程度であり、住宅ローン減税の適用を受けるために着工が伸びている

一次取得者と二次取得者の住宅取得能力

一次取得者と二次取得者の住宅取得能力(=資金調達可能額/住宅取得価格)を比べると、一次取得者では足元大幅に改善しているのに対し、二次取得者はほぼ横ばいで推移
  背景=マンション価格の下落により含み損が生じており、二次取得者の住宅取得能力を押し下げている

成長の期待されるリフォーム市場

99年春頃から住宅リフォームに対する家計の支出が増加している。今後は、高齢化・少子化が進む中で、高齢化対応や情報化対応など、リフォーム需要は堅調に推移すると考えられる(第1-3-9図

第4節  依然として厳しい雇用情勢

高い水準の雇用過剰感

  • 企業の雇用過剰感には若干の改善がみられるものの、雇用過剰感は依然として高水準。企業が高い水準のいわゆる過剰雇用を抱えていることが背景
  • 雇用者数は前年比で見ると常用雇用が減少し、臨時雇用が増加。また、新規求人数は増加傾向にあるが、その中心はパートタイム労働者

過去最高となった完全失業率

  • 完全失業率は、99年6月に4.9%と過去最高を記録した後も高い水準に止まっている(付図1-4-1
    →特に、世帯主の失業率は、6月には3.5%と既往最高にまで上昇
  • 若年では自発的に離職する人が多く、中高年では会社都合で離職する人が多い。
  • 労働力率は失業率が上昇する中で低下

失業期間長期化の背景

  • 中高年が年齢面の条件に突き当たり就業できないケースが多く、現在の失業期間が長期化の一因

低い伸びが続く賃金

  • 夏季のボーナスの減少等により、現金給与総額は99年に入り前年割れが続いていたが、99年9月には20か月ぶりの前年比プラスとなった(付図1-4-6
  • リストラや高齢化の進展などにより退職一時金は増加
  • 時間当たり賃金は98年には減少となっており、企業の人件費削減が進展していることが伺われる

見え始めた改善の兆し

  • 8、9月になって、鉱工業生産の改善の動きなどを反映して、残業時間が増加するなど、雇用情勢にも改善の兆しはみられる。
  • 見え始めた雇用改善の兆しを本格的なものにするために、景気の本格的な回復とともに、失業した場合のセーフティーネットの確立が不可欠

第5節  大幅な減少が続いた設備投資

大幅な減少が続いた設備投資

  1. 99年の設備投資…99年上期は製造業の減少寄与が大きい。規模別では、大中堅企業は製造業・非製造業とも大幅減、中小企業は製造業を中心に大幅減(第1-5-1図
  2. 機械受注…99年は98年に引き続き減少傾向となったが、7-9月期は前期比3.1%増。電気機械などの製造業を中心に底固めへの動き
  3. 99年度設備投資計画…98年度に比べて製造業・非製造業とも大幅減を見こむ。電気機械等一部の製造業では上方修正が見込まれるが、非製造業(設備投資に占める機械のウェイトが低い)を含む全体では依然として厳しい

借入制約、期待成長率の低下、過剰設備が存在する下での設備投資の状況

  1. 金融機関の貸出態度の慎重化と中小企業設備投資…足下、借入難易の困難超幅は徐々に縮小。しかし期待成長率が低いことや設備過剰感が高いこと等から、中小企業の設備投資の本格的な回復に関しては慎重な見方が必要
  2. 期待成長率の低下…設備投資の伸びと期待成長率の関係をみると、近年期待成長率が大きく低下している
  3. 設備投資の伸びと稼働率の水準…93年までの状況では、稼働率指数が103程度を超えると設備投資の伸びが高まるという関係がみられた。しかし、バブル崩壊後のバランスシートの悪化や期待成長率の低下等に伴い、設備投資の伸びが高まる稼働率指数の水準は上昇している(約108)(第1-5-7図
  4. 過剰設備の下での設備投資…業種間で設備過剰感や投資動向にばらつきがあること、競争力維持のために設備に体化された技術進歩の取り込みや情報化対応への設備投資が必要であること等を背景に、過剰設備が存在している一方で、設備投資が行われていると考えられる
  • ⇒99年の設備投資は大幅な減少基調。機械受注等の動きでは一部に底固めへの動きが見られるものの、全体としては依然厳しい
  • ⇒今後の設備投資の動きについては、過剰設備の存在や新規分野への設備投資といった点が重要となる

第6節  終了しつつある在庫調整

持ちなおしの動きが見られる鉱工業生産の動向

  • 99年前半は一進一退だったが、7-9月期以降持ち直し(7-9月期の生産:前期比3.9%増)
  • 10-12月期も、7-9月期に引き続き、高い伸びが見込まれる

生産財などでほぼ終了した在庫調整

  • 生産財では、輸出の好調などを背景に、概ね在庫調整を終え、積み増し局面に
  • 資本財は生産財にやや遅れており、消費財や建設財は足踏み状態(第1-6-1図
  • 業種別では、素材型業種の出荷が前年を上回る水準にまで回復しているが、加工型業種の出荷は、まだ前年並み(除く電気機械)
  • ⇒全体としてみれば、概ね在庫調整は終了しつつあるが、将来の需要の増加を見込んだ在庫の積み増しはまだ見られず

生産の持ち直しを牽引する輸出

  • 7-9月期の生産の大幅な増加には、輸出の増加も大きく寄与
  • 特に、生産財と消費財の輸出が増加している(第1-6-3図

在庫循環が景気に与える影響

在庫管理技術が進歩しても、企業の需要予測と現実とが乖離すると在庫循環の発生は避けられない

  • 意図した在庫増加:在庫水準を過小と判断し、将来の需要(出荷)を見越して積み増した在庫
  • 意図せざる在庫増加:企業が見込んだ出荷水準が達成されず、見込みが外れた分だけ積み上がった在庫
  • 97年10-12月期~98年半ば:需要の減少テンポが企業の見込みを上回る
    →「意図せざる在庫増加」
  • 98年半ば~pp年前半:需要の低迷と在庫過剰感に応じた生産調整が本格化
    →「意図した在庫減少」
  • 99年後半:在庫調整がほぼ終了し、景気に改善の動き
    →「意図した在庫増加」と「意図せざる在庫減少」(第1-6-7図

第7節  持ち直している企業収益と改善傾向にある業況判断

持ち直している企業収益

  1. 大蔵省「法人企業統計季報」によると99年1-3月期以降経常利益は前年同期比でプラスに転じた
  2. 民間需要の回復力が弱いことを反映し、売上高が伸び悩んでいる中でコスト節約の寄与などにより経常利益が改善している

改善傾向にある業況判断

  1. 日本銀行「企業短期経済観測調査」をみると、今次局面の業況判断の改善のペースは過去の景気回復局面に比較してスピードが早い
  2. 業況判断と生産設備・雇用の過剰感の関係をみると、今次局面では業況感の改善が進む一方で、生産設備・雇用の過剰感の改善は比較的緩やかなものに留まっている(第1-7-7図

第8節  前年を大幅に下回った企業倒産と中小企業で厳しい過剰債務

前年を大幅に下回った企業倒産

  1. 企業倒産件数を前年同月比でみると、98年10-12月期以降減少し、99年初めまで大幅に減少した
  2. 倒産件数の大幅な減少は、98年10月に導入された中小企業金融安定化特別保証制度によるところが大きい

中小企業で厳しい過剰債務

  1. 売上高債務残高比率、長期債務キャッシュフロー倍率など債務負担割合を計る比率をみると、90年代以降上昇していることがうかがわれる
  2. 大企業・中小企業、製造業・非製造業の分類で債務負担の程度をみると、特に中小企業の非製造業での負担が大きい
  3. 設備投資額と長期債務返済額の合計に占める債務返済額の割合は近年上昇し、過剰債務比率の上昇が設備投資の抑制要因となっていることがわかる(第1-8-5図

第9節  国際経済の動向

<輸出>

アジア向けを中心に回復した輸出数量
  1. アジア向けが増加、アメリカ向けが堅調、EU向けが7-9月期に持ち直しの動き(第1-9-1図
  2. 上記3地域ともに、所得要因が大きく寄与している。
下落した輸出価格
  1. 98年秋以降の円高が輸出価格の押し下げ要因。
  2. 99年に入り、輸出品目の高品質化が輸出価格を押し上げ
    →高付加価値化の例:電気機器、精密機器など(アジア向けで顕著)

<輸入>

アジアからの輸入を中心に増加した輸入数量
  1. 特殊要因を考慮すれば、アジアからは増加。アメリカ、EUからは横ばい(第1-9-5図
  2. 価格要因による増加寄与は、特にアジアで著しい
低下した輸入価格
  1. 98年秋以降の円高が輸入価格の押し下げ要因
  2. 原油価格の上昇が輸入価格の押し上げ要因

<国際収支>

横ばいで推移した貿易・サービス収支
  1. 貿易収支は横ばい←輸出入数量の増加基調、輸出入価格の下落基調
  2. サービス収支は横ばい←旅行収支横ばい(出国者数増加、旅行単価低下)(第1-9-12図
赤字幅が縮小した資本収支…資本収支全体では赤字は縮小
  1. 証券投資←非居住者による本邦株式の取得等が主因となり流入増
  2. 直接投資←対外直接投資は横ばい、対内直接投資が大幅増加
  3. その他投資←ジャパンプレミアムの解消に伴う流入増、邦銀の対外資産圧縮

第10節  景気を下支えする公共投資

景気を下支えする公共投資

民間需要の回復力が弱いなかで、景気は緩やかな改善が続く
公共投資…需要面から景気を下支えする大きな役割を果たす

公的固定資本形成…98年10-12期以降前期比で増加
99年7-9月期:前期比ではマイナス(第1-10-1図
但し、前年同期比では3四半期連続で10%を上回る伸び

年半ばから低調な動きとなった公共工事着工

99年1~4月にかけては前年を大きく上回る水準で推移
その後伸びが鈍化、低調な動き
しかし、事業の実施は着実に進む

「経済新生対策」の策定とその効果

  • 公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、景気を本格的な回復軌道に乗せるととともに、21世紀の新たな発展基盤を築くため、11月11日に「経済新生対策」を決定
  • 社会資本整備関連の事業規模…6.8兆円程度
  • 社会資本整備による今後1年間のGDPへの効果→実質1.6%程度

第11節  引き続き落ち着いている物価情勢

最近の物価動向

  • 国内卸売物価は原油価格の上昇や国内在庫調整の進展により下げ止まり
  • 消費者物価はおおむね前年並みの水準で推移しており、引き続き安定

デフレスパイラル懸念の後退

  • 産出額が投入額より大きいことを勘案した修正交易条件は、98年は改善
    →物価下落自体は企業収益を改善
  • 各種の政策効果の浸透により99年度上半期には実質GDPは5期ぶりに前期比プラスとなり、国内卸売物価も下げ止まり
  • 「経済新生対策」の策定により、今後需給ギャップの縮小が期待される

過去に比べ小さくなった原油価格の影響

  1. 円高により円ベースでの輸入原油価格上昇が緩和
  2. 経済の原油依存度低下
  3. 需要の弱さ、規制緩和による価格競争の激化から価格転嫁が進みにくい
  4. 高水準の備蓄が確保されていることによる不安感の低下
    →原油価格上昇の国内物価への影響は、現段階では湾岸危機時と比べても小さなものに止まっている(第1-11-2図

第12節  ゼロ金利政策下での金融・資本市場の動き

ゼロ金利政策が浸透する短期金融市場

  1. 2月以降の金融市場調節方針の一段の緩和は、無担保コール(オーバーナイト物)市場において実質ゼロ金利を実現
  2. コールレートの低下を受けて、ターム物金利(CD及びユーロ円TIBOR)、企業の発行するCP金利も低下(1-12-1図
  3. 2月以降、無担保コール市場残高が減少しているが、現在のところ資金決済活動に支障は出ていない。一部の資金は収益機会を求めて他の金融市場にシフトしたものと考えられる

長期金利の強い上昇圧力と政策対応の効果

  1. 長期金利は、2月の金融市場調節方針の変更及び国債の年限別発行額の振替え(長期債の発行予定額の一部を中期債等に振替え)等を受けて2月から5月にかけて低下
  2. 5月から8月にかけては、中期債にも需給懸念が生じ、振替えの長期金利低下への効果が一巡する中、景気回復期待の高まりから、上昇
  3. 8月以降は、ゼロ金利政策継続の長期化期待が、短期金融市場からの資金流出を通じて長期金利にまで波及したものと考えられ、比較的安定して推移(第1-12-6図

企業の資金調達状況

  1. 企業の資金需要の弱さから、金融機関の貸出は低調
  2. 直接金融市場(普通社債、CP)は、低水準で推移するも、ベンチャー企業向け株式市場の創設など一部で活性化の兆し

ゼロ金利政策と資金の流れ

  1. )M2+CD(前年比)を見ると、99年に入って、金融機関による貸出は低迷する一方、公共事業関連支出等の財政要因がマネー拡大方向に作用。これにより、3月以降6月まで前年比伸び率を拡大。7月以降9月までは鈍化(第1-12-11図
  2. 99年中、預金通貨は伸び率が上昇している一方、準通貨は低下
    →ゼロ金利政策の浸透により低金利の長期化が予測され、資金運用主体の流動性選好が高まったことから、定期預金から普通預金へシフト

第2章

第1節  景気回復初期の円高の影響とアジアとの好循環

今回の円高の特徴

  1. 前回(90年代半ば)とほぼ同テンポで進行(99年11月現在)
  2. 実質実効レートでみれば、前回ほどではない円高水準(99年10月現在)

円高の日本経済への影響

円高→輸出企業の収益や外需の減少をもたらす

  1. 円高による価格変化
    →10%の円高の場合、最終的に円ベースの輸出価格は4.2%下落(外貨ベースの輸出価格への転嫁率は前回に比べ上昇)
  2. 円高による数量変化
    →10%の円高の場合、最終的に輸出数量は2.7%の減少
  • ⇒以上のような変化等により、円高は、財貨・サービスの純輸出(名目外需)を当初から減少させる。ただし、アジア経済の回復等により輸出が増加していることから、理論値に比べ現実値の減少幅は少ない

円高への対応力

厳しい経済環境の中、企業の円高への対応は?

  1. 先物市場等を通じた企業のリスクヘッジの進行(第2-1-10図
  2. 生産拠点や物資調達の地域的構成の変化
  3. 過去の円高の経験
  • ⇒企業の円高対応力は長期的にみて向上しているものとみられる

復活しつつあるアジア経済との好循環

  1. アジア経済の回復となお高いその潜在成長率
    →99年に入りアジア経済は急速に回復。開かれた貿易と直接投資を通じて、今後も成長を継続していく環境が整いつつある
  2. 貿易・直接投資を通じたアジアとの好循環(第2-1-13図
    →長期的にみて、日本とアジアとの貿易・直接投資を通じた結びつきは強まっている。アジア危機後落ち込んだ日本の輸出入も回復している
  3. 資金面を通じたアジアとの好循環
    →対アジア証券投資、円借款等を通じて、資金面においても好循環復活の兆しがみられる
  • ⇒日本経済とアジア経済との好循環が復活しつつある

まとめ

景気が自律的回復軌道に乗っていない状況の下、円高は今後の景気にとって懸念要因。但し、生産性上昇を誘引する可能性もある。企業の円高対応力向上により、日本経済の円高への対応力は長期的に高まる方向にあると考えられる。また、諸外国経済の拡大やアジア経済との好循環もプラス要因となっている。

第2節  景気が改善する中での雇用動向

雇用者所得を抑制する要因

  1. かなり高い過剰雇用の存在
  2. 低水準となっている所定外労働時間
  3. 中高年の失業の増加
  4. 雇用弾力性が高い非製造業の伸び悩み

⇒5年前と比較すると、賃金水準が最も高い45~54歳の労働者の割合が高まっていることから、この年齢層に対する雇用調整圧力が強くなってきている(第2-2-2図
⇒また、企業側は常用雇用から臨時・日雇職員にシフトすることによって人件費の削減を図っている

90年代初頭の米国の景気・雇用情勢

  • 過去の景気回復と異なり、景気の底から約1年にわたって雇用が増加しなかった(いわゆる「ジョブレスリカバリー」)(第2-2-6図
    ⇒景気回復初期には、低い成長率に止まった
  • 雇用が伸び悩んでいた91年の消費は、実質可処分所得、消費性向がともに低下したため、減少した
    ⇒但し、物価の安定や株価上昇による資産効果が消費を下支え
    ⇒消費の本格的回復は、雇用が増加に先行した訳ではなかった(第2-2-8図
  • 労働市場においては、従来の景気後退期と比べるとホワイトカラー労働者、中高年層が雇用調整の対象になる割合が高かった
    ⇒90年代初頭にリストラで一旦流動化した労働者が、92年以降の回復期に他産業で吸収された
    ⇒政府が労働移動に重点を置いた政策に転換したことが、雇用増加に寄与

日本経済へのインプリケーション

現在の日本経済の状況は90年代初頭のアメリカ経済に類似しているが、

  • 株価上昇による資産効果がアメリカほど期待できない
  • 雇用調整圧力が家計の柱である中高年層に特に強い
  • 再就職に伴う収入減少などのコストが大きい
  • 低金利が住宅投資などを押し上げていく余地が限られている

などから、景気回復にとっての雇用回復の必要性はアメリカよりも大きい
⇒医療福祉・サービスといった新規起業の増加とそれに伴う雇用増を実現するとともに、確定拠出型年金の導入・退職金税制の見直し等によって転職に伴うコストを低下させて労働移動を容易にしていく必要がある

第3節  金融システム問題の現状と金融政策の効果

金融システムの回復と貸し渋り問題

  • 銀行の自己資本比率低下や資金調達懸念を背景とした、いわゆる貸し渋り問題が発生したが、銀行の貸出スタンスは以下の要因から98年10月~12月期以降大きく改善(第2-3-1図
  1. 金融再生法、金融機能早期健全化法等の一連の法整備や日本銀行のゼロ金利政策などを受けて銀行の資金調達環境が改善したこと
  2. 中小企業金融安定化特別保証制度の創設
  3. 99年3月には公的資金(7兆4,592億円)と自力調達で合計9兆6,119億円の資本増強がなされたこと

金融政策の効果

  • 金融緩和が経済に及ぼす影響を経路別にみると、
企業への効果=利払い負担を軽減し、長期債務・キャッシュフロー比率を改善する効果
→収益の大幅な減少を受けて、効果が相殺
家計への効果=長期金利の低下を背景に住宅投資が増える効果
→所得・貯蓄要因が抑制的に作用し、大幅な増加に至らず
銀行の貸出=中小企業向け貸出を前傾化し、設備投資が増大する効果
→銀行のリスクテイク能力の低下や株価、地価の下落に伴う担保価値の減少などから中小企業向け貸出は減少
  • 様々なルートを通じて金融政策の効果があったと考えられるものの、バランスシートの毀損や期待成長率の低下といったバブルの後遺症が大きく、経済を自律的回復軌道に乗せるには至っていない

ゼロ金利政策の現状と更なる金融政策の発動余地

ゼロ金利政策の現状

  • 99年2月12日のゼロ金利政策の決定以降、市場との対話を続けながらコールレートを0.03%まで低下するように積み上幅を調節。この結果、5月下旬以降は、積み上幅1兆円の調節を継続(第2-3-9図
金融政策の発動余地
  • 99年2月以降日本銀行は所要準備を大幅に上回る資金を供給し続けているが、資金の多くは短資の日銀預け金として積み上がっており、資金供給のオペレーションでも「札割れ」が発生する状態(第2-3-10図

→無担保コールレートをゼロに誘導している現状では、伝統的な政策の枠組みの中で、追加的な緩和策によって一層の景気下支えを行う余地は必ずしも大きくないと考えられる
→一方で、中央銀行のスタンスを明確に示すことが金融市場に与える影響は小さくはなく、今後も適切かつ機動的な金融政策運営がなされることが期待される

第4節  過剰設備、期待成長率低下、不確実性増大の下での設備投資の回復力

産業別にみた過剰設備と雇用・債務の過剰との関係

  1. 製造業を中心に厳しい過剰設備…97年4-6月期を起点に、産業別に過剰設備率(過剰設備額/資本ストック額)の動きを見ると、99年1-3月期にかけて製造業で上昇率幅が大きくなっている。非製造業では建設などで上昇幅が大きい
  2. 過剰設備と雇用、債務の過剰の関係…産業別に雇用過剰感や債務償還年数(長期債務残高/キャッシュフロー)の変化をみると、概ね過剰設備率の変化と相関がみられる(第2-4-6図
  3. 設備投資と債務返済とのバランス…設備投資額と債務返済額の合計に占める設備投資の割合の動きをみると、製造業では加工・組立型が92年度以降大幅に低下した後、上昇している。また非製造業では建設、不動産などで比率が低下しており、概して技術革新のテンポの早い産業で設備投資の割合が高くなっている

設備投資と資本市場との関係

日本の店頭企業と米国のNASDAQ企業の設備投資行動を比較すると、NASDAQ企業では、企業の株式市場で評価された資本価値と設備投資との関係が密接であった一方、日本の店頭企業ではその連動性がみられなかった。これは、株式市場において企業が適切に評価されなかったことにより、将来有望な企業でも株価は上昇せず、資本市場を通じた十分な応援が受けられなかったことを示唆している。

新規需要が見込まれる設備投資分野

  1. 今後増加が見こまれる投資分野…環境関連、情報・通信関連、新素材・新材料関連、医療・福祉関連などでの強化・参入が図られている(第2-4-8図
  2. 情報通信関連…電子商取引(2003年の市場規模71.5兆円)、ITS(高度道路交通システム、2015年の市場規模約7兆円)、パソコンのモバイル化や移動体通信との統合(若者を中心とした国民各層に急速に普及)等(第2-4-9表
  3. 環境関連…廃棄物再利用やライフサイクル・アセスメントなど環境への負荷の低い製品の開発、エコビジネスの進展
  4. 医療福祉関連…高齢者・障害者介護や人間工学に基づく福祉用具の開発等
    米国では90年代に入り医薬品・ヘルスケア関連企業の設備投資が大幅に増加、日本でもガン検診や人間ドックの利用者増、健康増進施設への需要増
  5. 規制緩和による設備投資を促す環境整備…通信業など
⇒雇用や債務の過剰と相互に関係する過剰設備の存在により、設備投資の早期の本格的な回復が見込めない中、情報通信、環境、医療等の新規分野において技術革新が進み設備投資が活発化することが期待される

第5節  財政政策の現状

拡大した構造的財政赤字

90年代に財政政策は景気を下支えする大きな役割を果たしてきた(公的固定資本形成は6年間で累計230兆円)
財政収支=循環的財政収支(ビルト・イン・スタビライザー)+構造的財政収支(裁量的財政政策等)
91~96年度における一般政府財政収支の赤字拡大の大半は構造的財政収支の赤字幅拡大によるもの(第2-5-1図

公共事業の総量と配分の推移

99年度における国の公共事業関係費は、当面の景気回復に全力を尽くすとの観点から、相当程度拡大(対前年度比+5%、公共事業等予備費を含めれば+10%超(当初予算ベース))。公共事業の事業別・所管別シェアは従来に比較するとこのところ大幅に変化。今後一層の配分の重点化が求められる。

低迷を続ける税収

90年代の国の一般会計税収は、景気低迷による税収減等の影響に加えて、景気に配慮した大規模な減税や各種税制改正による税収減の影響もあり、総じて減少傾向で推移。

拡大した財政赤字と政府債務残高

我が国一般政府の財政赤字及び粗政府債務残高は主要先進国中最悪の水準(第2-5-5表)。
仮にこうした状況が長期化すれば、将来世代への負担の転嫁の問題のみならず、実体経済に対してクラウディング・アウト等の悪影響を及ぼす可能性も否定できない。景気回復が達成されたあかつきには、財政・税制上の諸課題につき幅広い検討を行い、財政赤字の縮小に努める必要がある。

長期金利への含意

財政赤字は拡大しているものの、日本の家計等が保有する大量の金融資産を運用する各種金融機関にとって国債は最も安全な投資対象。したがって、民間の資金需要が本格的な回復を迎える前に国債金利が大きく上昇してくる懸念は比較的少ないと考えられる。

第3章

第1節  景気の変動と消費の変動

GDP成長率への寄与の大きい民間消費支出

景気拡大期と後退期とのGDP成長率の差は80年代は小さくなった
民間最終消費支出はGDPに対して、

  • 他の項目と比較して比較的安定した寄与(第3-1-1図
  • 但し、97年3月以降の景気後退局面ではマイナスに寄与

景気と消費性向の関係

高度成長期には景気拡大期に消費性向は低下、後退期に上昇
→景気の下支え効果
高度成長期以降、景気拡大期に消費性向は上昇、後退期に低下する局面が出現
→景気の下支え効果の弱まり

なぜ消費性向が景気拡大局面に低下しなくなったのか

考えられる理由

  1. 拡大期と後退期における所得の伸び率の差が小幅化
  2. 資産効果の影響
  3. 現在の所得の増加(減少)以上に将来の期待所得が増加(減少)

最近の消費改善局面の動き

  • 消費支出については、需要項目別にみると、GDPへの寄与度は最も高いが、四半期の動きをみると、このところ足踏み状態にある(第3-1-3図)
  • 消費性向については、第1四半期目に減少、第2四半期目に持ち直したものの、第3四半期目に横ばい

→消費は近年、以前ほど景気変動を安定させる効果を持たなくなってきている
→これは、消費がかつてよりも景気の先導役になりうる可能性があることも意味する

第2節  年齢別にみた消費行動の特徴と消費低迷の要因

年齢階級別にみた消費行動

  • 世帯主が60才以上の世帯の消費支出が好調
  • 96年以降、50代は横ばい傾向、30~40代の消費は減少に転じる

背景

  1. 60才以上の世帯は可処分所得が堅調に伸びている(第3-2-1図
  2. その他の世代は可処分所得が低迷していることに加え、若い世代は消費者マインドの悪化が消費に与える影響が大きく、また、住宅ローン負担が消費を抑制している可能性
  • 単身者世帯の消費支出は減少傾向、60才以上では相対的に堅調

年齢階級別にみた貯蓄行動

  • 長期的には全ての年齢階級で消費性向は低下、20代、30代で低下幅は大きい
  • 全ての年齢階級で消費者マインドは悪化、ただし、98年第4四半期を底に全ての年齢階級で持ち直しの動き

貯蓄目的-消費者は将来何を買おうとしているのか-

  1. 「病気や不時の備え」は最大だが90年代には横ばい
    「老後の生活資金」が増加
    「こどもの教育・結婚資金」は減少傾向
  2. 家計のライフステージ別にみると、
  • こどもの教育資金は20代から40代にかけて高く、50代からは低下
  • 住宅資金は20代、30代
  • 老後の生活資金は50代から増加
  • 病気や不時の備えは高齢者ほど高い

貯蓄行動に影響していると考えられるその他要因

  1. 将来財(若い世代にとっては教育、住宅費、中高年にとっては老後資金)の価格の上昇を消費者が見込んでいる可能性
  2. ライフスタイルの変化
    加齢による同居率の上昇(加齢効果)はそれほど大きくなく今後、高齢者になっていく世代の親族との同居率は低下
  3. 家計が慎重化している可能性

店舗選択からみた消費行動

  1. 増える専門店、コンビニの販売額
  2. 消費者の主体的な店舗選択が顕在化
  3. 価格指向は高まっており、若い年齢階級ほど価格指向が高い傾向

第3節  消費低迷から回復に向けて

消費が回復するための経済的要因

  1. 所得、資産の増加
    現在の所得、非人的資産(流動資産、実物資産)、家計の想定する将来所得が増加すれば、消費は増大する
  2. 消費者マインドの改善
    90年代を通じて老後の暮らしに対する経済面での不安が高まっている(第3-3-1図(1)
    社会保障制度の将来像を明確化することが重要
  3. 新たな商品の登場(携帯電話など)
    新たな商品の登場は、単に需要の構成を変化させるのみでなく、競争の加速を通して生産性の向上、所得、消費の増大につながる可能性がある

消費需要の制約要因の解消にむけて

  1. リスク
    親族・地域社会のリスクプール機能の低下による不確実性・不安感の増大
    ←安心感のある民間保険や効率的でコスト意識が働くような公的社会保障制度に向けての努力が重要な課題
  2. ゆとりの空間の不足
    良質な借家の供給不足
    ←広く良質な住宅を様々な選択肢から選び得る環境の整備
  3. 自由時間
    雇用者の有給休暇取得率は5割程度にとどまっている
    ←自由な日程での休暇の取得を可能に
    ⇒施設の稼働率も休日集中から平準化し実質消費の拡大につながる
  4. 高齢者
    高齢者は今後、消費の大きな担い手となる
    ←高齢者のニーズにあった商品・サービスの開発―オンライン健康相談―
    ←高齢者の元気さとモビリティの確保―歩いて暮らせる街づくりー
  5. インターネット
    インターネットの接続料金はまだ高い
    ←料金の低廉化により、潜在的ユーザー・潜在的需要を顕在化

ゆとりある豊かさにむけて

消費の着実な増大には、

  • 所得の増大、将来不安の軽減(第3-3-5図
  • ソフトハード両面での消費インフラの整備が重要

中長期的に消費の充実が進むことは、我々の生活をより質の高いものにしていく上でも、また、日本の経済を新しい成長経路にしっかりと乗せていく上でも重要な課題

おわりに

当面の景気を考える上で重要ポイント

円高について

  • 今回の円高は実質実効レートでみると急テンポ、景気が自律的回復軌道に乗っていない状況の下で、円高は今後の景気にとっての懸念要因。但し、円高が生産性上昇を誘引する可能性もある
  • 為替変動リスクへの企業の対応力は、先物取引や企業活動の国際化等を通じて、長期的には高まる方向
  • 円高対応力が高まっても雇用への影響は懸念

雇用面について

雇用面のリストラの及ぼし得る2つの効果

  1. 企業収益の改善→株価の上昇→資産効果を通じて消費増加
  2. 雇用削減→消費に悪影響

米国の「雇用増なき景気回復」の経験と日本の現状を比較すると、日本は以下の要因から景気回復のために雇用情勢の改善が米国以上に重要

  1. 株価上昇が資産効果を通じて個人消費を押し上げる度合いが比較的小さいこと
  2. 雇用削減圧力が家計の柱である中高年男子に強いこと
  3. 労働市場の流動性が低く、年齢層を問わず再就職に伴う収入減少などのコストが大きいこと
  4. 低金利が住宅投資などを押し上げていく余地が限られていること
    →企業活動の効率性を高めていく努力が必要であるが、これが雇用削減型ではなく雇用を活用する形で進んでいくように環境を整備していくことが必要
    →労働市場での需給のミスマッチを縮小する方策も重要

金融システムについて

  • 金融システムに関するリスクは大幅に軽減←金融システム安定化のための制度が整えられたことや、公的資本増強が背景
  • 金融システムの一層の健全化や直接金融の健全な育成が重要課題
  • 金融政策は景気の下支え役を続けていくことが望まれるが、追加的な政策効果は限定的

設備投資について

  • これまでは成長過程にある企業の設備投資と株価との連動がみられなかった。これは、株式市場が企業を適切に評価できず、将来有望な企業でも株価は上昇せず、資本市場を通じた十分な応援が受けられなかったことを示唆
  • 日本は、パソコンのモバイル化や移動体通信との統合などで米国を追い抜きつつあり、これが新しい投資機会につながる可能性
  • 医療や社会福祉関係の設備投資は堅調に推移していく見込み

財政赤字について

  • 財政赤字は深刻な状況。景気が本格的な回復軌道に乗った段階で、中長期的視点から対応策を検討する必要
    →財政に依存しない体質への転換が必要
  • 民間の資金需要が本格的に回復しない間に国債金利が大幅に上昇する懸念は少ない

日本経済の本格的再生に向けて

  • 日本経済が本格的に再生し、新しい成長経路に乗っていくためには、所得の増加にみあって民間需要が増加していくことが必要
  • かつてのような高い成長率を望みにくいことや、企業の体質改善の一環として設備投資が厳選されていく可能性を考えると、景気循環を均してみた設備投資/GDP比率はかつてに比べ低下していく可能性が高い
  • 国内民間需要主導型の成長を持続していくためには、消費が所得にみあって伸びていく必要
  • そこで消費性向が重要となるが、住宅の量的充実や社会保障制度のそれなりの充実にもかかわらず、予想されたほどに家計の貯蓄率が低下してこない

その背景は様々な要因が考えられるが、今回は以下の2つの要因に焦点を当てる

  1. 将来の不確実性へ備える意識があまり低下していないこと
    • 年金の将来に関する不安
    • ベビーブーム世代・若い世代がともに老後の生活費や将来の財政負担増に自分で備える必要を感じている
    • 核家族化や晩婚化が進む中で、夫婦または個人単位で将来の不確実性へ備え
      →個別に準備された貯蓄の総額はマクロ的な必要額を上回る
      →将来の消費に結びつかない貯蓄、意図せざる遺産
      →貯蓄超過傾向
  2. 消費を制約する所得以外の要因の存在
    • 勤労者の有給休暇の取得は余り増えていない
    • 高齢者の消費を取り巻く環境にも公共施設のバリアフリー化、寄付などを通じた貯蓄の還流など、改善の余地
    • インターネットの接続料金などの面で改善の余地
      →消費のためのハード・ソフト両面のインフラを整えていくこと
    • 将来に向けた個人レベルの不確実性がより効率的に分散されるような環境の整備
    • 国民の豊かさへの欲求が消費需要として発現しやすいような環境の整備、が必要

つまり、日本経済の本格的な再生は国民生活の満足度や安心度の増進と密接に関連

なお、政府は2000年度の実質経済成長率を1.0%程度、完全失業率を4.5%程度と見通している(詳細は「平成12年度政府経済見通し」参照)。2000年度後半には景気を自律的な回復軌道に乗せ、2001年度には日本経済を新たな成長経路に乗せることを全力を挙げて目指している