昭和44年

年次経済報告

豊かさへの挑戦

昭和44年7月15日

経済企画庁


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第1部 昭和43年度の景気動向

2. 景気上昇の性格とそれを支えた要因

(5) 下期にふえた政府支出

43年度財政は景気抑制機能を重視するかたちで予算編成が行なわれたが,政府支出を上期と下期の動きに分けてみると,上期は抑制的,下期はやや拡大的であつたといえる。

すなわち,43年度の一般会計の支出状況を予算現額(当初予算+繰延べ措置などによる前年度からの繰越し額)に対する進捗率でみると,4~6月期では暫定予算のため出遅れた42年度をわずかに上回る程度で,7~9月期にはおちこみが目立つている( 第59表 )。このように上期の予算執行が抑制的であつたのは金融引締め政策とあいまつて財政面から景気を刺激することのないよう慎重な態度がとられたためである。しかし10~12月期以降になると予算執行は漸次弾力的となり,かなりの進捗を示すようになつた。とくに公共事業関係費についてみると上期中はかなり出遅れていたが,下期になつて進み,年度末には公共事業の施行促進が行なわれた41年度を上回つている( 第60図 )。この結果10~12月期以降の中央政府による固定資本形成はかなり高い伸びとなつている( 第61図 )。

一方,地方財政の動きをみると,43年度地方財政計画は地方税,地方交付税の好調を反映して前年度比17.5%増の高い伸びとなつた。またその執行状況を固定資本形成(普通会計+非企業会計)の動きからみると,地方税収入が好調なこともあつて年度はじめから支出が進捗しているのが目立つている。

以上のような中央財政,地方財政の動きを総合すると 第62図 にみるように,4~6月期,7~9月期は財政支出の伸びが鈍化し,国民経済計算上の財政赤字率(財政赤字/財政支出)も低下の方向にあつたが,10~12月期に入ると,経常購入や固定資本形成がややふえると同時に,政府在庫が国内産米の買入れを中心に大幅にふえたため(国内産米買入れ量当初予想805万トン,実績1,004万トン),財政赤字率も拡大をみせている。


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