昭和44年

年次経済報告

豊かさへの挑戦

昭和44年7月15日

経済企画庁


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第1部 昭和43年度の景気動向

2. 景気上昇の性格とそれを支えた要因

(6) 在庫投資の漸増

高水準のまま景気引締めを迎えた民間在庫投資は景気調整期間中流通在庫投資において減少がみられたものの,製造業での増加により全体としてはわずかな減少を示したにとどまり,( 第63表 )43年春ごろを底にして再び上昇に転じた。

すなわち,引き締め後1四半期の42年10~12月期には2兆216億円(年率,季節修正値以下同じ)と2兆円をこえた在庫投資は43年1~3月期には16.1%の減少となつたが減小は1四半期だけで,4~6月期には再び14.4%増と回復し,7~9月期は0.7%増とほぼ保合いに推移した。引締めが緩和されたあとの10~12月期には16.3%増加し,2兆2,720億円とこれまでの最高水準となつた( 第64図 )。しかし,国民総支出に対する民間在庫投資の割合は4.1%で,岩戸景気の最高時(36年10~12月期の8.2%)にくらべると半分の低さである。岩戸景気のときは,予防的金融引締め期(34年12月~35年8月)のあと生産規模にくらべて過大な原材料在庫投資が行われ,また製品在庫についても意図せざる在庫が増大するなど在庫の過剰蓄積が行なわれ,その後に大幅な在庫投資の減少がおこつた。これに対し,43年の在庫の調整はきわめて軽微なものであり,引締め解除後においても投資の急増はみられなかつた。

形態別にみると,製造業の原材料在庫は,引締めの時点ではその水準がむしろ不足気味の業種が多くそのためほとんど調整が行なわれなかつたが,43年末においても全体として過剰の状態にあるとはみられない。業種別には,繊維,化学,鉄鋼などはすでに適正水準またはこれをこえる水準に達しているとみられるものの,一般機械,電気機械,輸送機械などでは,不足の状態にある( 第65図 )。このため今後傾向的にはこれらの不足業種を中心に原材料在庫投資の増加が見込まれる。しかし,最近では在庫管理技術が進み,また,これらの不足業種においては生産増加に必要な原材料在庫投資額が小さいので,急増することはなかろう。

仕掛品在庫投資は,43年1~3月期に減少しているが,4~6月期以降おおむね横ばいに推移している。

製品在庫についてみると,一部品目の影響もあつて製品在庫率指数は上昇傾向を示したが,法人企業の投資額としては43年に入つて以来減少気味である。また,日銀の「短期経済観測」によると,製造業の製品在庫水準についての判断は「過大」とみるものの割合がいぜん低水準にある( 第66図 )。

流通在庫投資は,42年以降高水準に推移しているが,42年前半には鉄鋼,繊維が,43年4~6月期以降では自動車,民生用電気機械などが増加している。( 第67図 )。規模別では,商品の多様化が進んでいることもあつて小規模なものほど在庫率のすう勢的上昇がいちじるしい反面,大規模企業では商品在庫の管理方式が進歩したためゆるやかながらもすう勢的低下傾向にある。このようなすう勢的な動きを考慮すると,各規模とも在庫水準としては高くない( 第68図 )。とくに1,000万円未満の小規模において在庫率水準が低く,これが10~12月期に在庫投資を急増させたものとみられる。